きっかけは父の遺品整理——次世代のシェアリングインフラを目指す収納アプリ

株式会社トランクは2016年8月、クラウド収納サービス「次世代型トランクサービスtrunk(トランク)」提供を開始しました。2017年1月には、収納物を売買・譲渡してシェアする新機能を発表。今回は、代表取締役社長の松崎早人が「シェアリングインフラサービス」を立ち上げるに至ったストーリーを紹介します。
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出口が見えない自分との葛藤、震災をきっかけに自身の価値観が変化

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▲東日本大震災直後の宮城県気仙沼市

松崎は「もっと多くの人に役立つことを追求したい」という想いで「次世代型トランクサービス trunk(トランク)」をつくりました。そのきっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災です。

当時、自ら立ち上げた事業を畳んで無力感に苛まれていた彼は、「今まで自分が産んできたことは何なのか、何もできない自分を清算したい」という想いに駆られて、震災発生の3日後に現地入りボランティア活動をはじめます。

火事の跡の焦げたにおい、流された家、家族が目の前で流されたという方々……大切なものが一瞬で失われてしまった光景は、あまりにも悲痛で、やるせないものでした。生き地獄とも言える状況を目の当たりにし、松崎の内面でなにかが変わりました。

松崎 「それまでの私が『価値』だと思って追い求めてきたものは、自分が楽しいと思えるか。 “自分を中心としたこと”ばかりでした。でも被災地でボランティア活動をするなかで、はじめて『真に人の役に立ちたい』と、心の底から思うようになったんです」

その前年には、父親が64歳の若さで逝去していました。自分もあと十数年で、父親が亡くなった歳を迎える。それまでにどれだけ、人の役に立つことに全力で取り組めるのかーー。

20代まではトップモデルとして活躍し、その後も持ち前のアイデアと行動力で次々に事業を展開していた松崎。

しかし2008年のリーマンショックの波及を受け、はじめての挫折を味わったばかりでした。そして重なるように父の死や震災を経験し、松崎自身の価値観が変わりはじめていったのです。

父の遺品整理からヒントを得た「モノの収納とシェア」の着想を事業に

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▲父・母と一緒に

松崎が新しいサービスの構想を思いついたのは、父親の遺品管理をしたことがきっかけでした。

父が亡くなった直後、松崎家族はすぐ遺品を整理することができず、まずはすべてをトランクルームに預けることにしました。しかし、トランクルームを検索・比較・選択するためのよいWebサービスがなく、不便さを強く感じたのです。

それから3年ほどが経過した2013年、松崎をはじめ家族の気持ちが落ち着いたところで、ようやく遺品の整理を開始しました。ところが、トランクルーム業界は、以前の状況から一切改善されていなかったのです。

松崎 「当時、各トランクルームのホームページにはサービスの詳細は記載されておらず、内容についての検索や比較できるものもありませんでした。トランクルームに預けたあとのことも預けたままにするのか、何か別の方法があるのかわかりませんでした。初めてトランクルームを使う場合、かなりの時間と手間がかかります。この経験から、新たしいサービスの可能性に気づいたんです」

きっと、自分たちと同じような経験をしている人は多いはず。そこで松崎は、2014年に全国トランクルーム情報比較検索サイト「@trunk(アットトランク)」をリリースしました。同サイトの登録物件数は現在10万室を超え、国内最大規模へと成長しています。

さらにサイトのリリースから1年ほど経って松崎が着目したのは、トランクルームに預けるのは単なる「モノ」ではなく、それにまつわる「想い」が付随するということ。それなのに、収納されたモノは、結局使われることもない……。そして大切に思ったはずの想いがいつの間にか、「中古品、処分したい品」へと変わっていくことが多いという事実でした。

松崎 「遺品に限らず、人はモノに対して思い入れがあるからこそ、捨てられないモノが増えていくんです。ところがトランクルームに預けると自宅から距離を置いて冷静になってその“想い”の整理ができる。モノへの想いは変わりませんが、距離と時間を置くと、想い入れが整理され、ほかの人に役に立つのなら譲ろうという気持ちに変化していきます。この“想い”の動きに着目しました」

このことが、のちに発表するサービス「次世代型トランクサービスtrunk(トランク)」のヒントとなるのです。

本来の“モノの価値”を発揮するためにできること

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▲のちにトランクの仲間となる百瀬(手前青)と一緒に白十字株式会社をはじめとする有志の方から集めた物資を東北へ
松崎 「父の遺品をオークションを使って譲渡したとき、母親が『もう使われることがないモノだと思っていたけど、喜んでくれる人がいたってことは、お父さんの持ち物が役に立ったということね』と喜んでいたのが印象的でした。このことも事業のヒントになっています」

自分にとっては「使っていないモノ」が「必要とされるモノ」に変わるーー。

そこで彼は、自ら新たなクラウド収納サービスを開発することを決意します。そして2016年8月に「次世代型トランクサービス trunk(トランク)」の提供を開始。trunkは、1箱あたり月額500円の定額料金で、お預かりした物品の撮影し収納までを一括管理できるシステムです。続けて2017年1月には、預けた品を売買、譲渡ができるサービスも付加されました。

かつてはモノを所有することがステータスと見なされましたが、時代は変化し、さまざまな分野で「シェア」の意識が高まってきています。

私たちが提供したいのは、単にモノを収納するだけのサービスではありません。Webサービスを提供していくなかで、モノを収納するだけでなく、収納されたモノを、必要な人が必要な時に使うことができるようにする仕組みを作ることの必要性を感じるようになりました。

その仕組みを整えることができれば、収納されたモノは捨てられることなく、本来の“モノの価値”が発揮できる。そして、モノに費やしていたコストや空間を、ほかの大切な用途にシフトすることができるようになると考えたのです。
(株)トランクが掲げる「シェアリング・インフラの構築」への挑戦です。

次世代の当たり前となる「シェアリング・インフラの構築」に挑戦

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▲ライフスタイルに溶け込むテクノロジーを創造することを目指す
松崎は自分たちの事業を通じて、モノが社会でシェアされる仕組みが、電気や水道と同じように、生活インフラとして機能する未来を目指しています。

さらには、モノがあふれる日本では不要とみなされるような品を、発展途上国に送って役立ててもらうことも視野に入れています。

松崎 「将来的には、世界に間口を広げてモノのシェアをつなげていくことを考えています。10年後、自分の娘が子どもを産み、その孫と過ごしている未来では、モノをシェアする仕組みが意識することなく生活に浸透しているでしょう。私たちは今、その未来を創っているんです」

2017年2月現在、「もっと便利に、もっと快適に。」という次世代の暮らしのスタンダードを創ろうという松崎のビジョンに共鳴して、多くの社員やパートナーが集まってきました。

松崎 「モノをシェアする仕組みは、世の中の流れからいえば必然。そのインフラを私たちが創る。本気でそのように思い、そのことが「世の中を変える」と考えていることが伝わったから、周りの皆が力を貸してくれました。スタッフも20人ほどに増え、さらに加速をつけて事業をスケールさせていきます」

サービススタート時から、パートナーの業界大手のSBSロジコム株式会社に協力いただき、さらに成長に加速をつけています。

今後もユーザーの目線に合わせて「あったらいいな」と思われる機能を付加しながら、モノをシェアする理想の「生活インフラ」へーー。私たちの挑戦は、今はじまったばかりです。

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