「ビジネスを超越した、実現したい想い」溶岩ヨガで実現する“心と体の健康”(後編)

溶岩ヨガスタジオ「AMI-IDA(アミーダ)」を中心に事業を行なうTSCホリスティック株式会社、代表取締役会長兼社長・野澤克巳。多くの壁が立ちはだかる溶岩ヨガ事業を、野澤はなぜこんなにも加速させるのか。背後に隠される、現代社会が抱える「心と体の健康」の問題と、ヨガの本当の必要性とはーー
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スピード感を高めるための、インストラクター社内養成という挑戦

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▲代表取締役会長兼社長・野澤克巳 ©️Hideyo Fukuda

溶岩ヨガスタジオの経営で、まずこだわったのは、溶岩の供給元だった。候補に挙がっていたのは、富士山、桜島、中国、そしてバリ島の4カ所。コスト面と安定供給面を考慮し、野澤自身がそれぞれの溶岩を体験して、一番味わい深いと思ったのがバリ島の石だった。

経営においてもうひとつ注力しているのが、インストラクターの養成だ。13年前(2005年)に代官山で行なっていた、有料のヨガインストラクター養成講座を、さらに質を高め、社内研修として行なうことにしたのだ。

野澤 「これはものすごいチャレンジなんですよ。有料だったものを社内で、つまり実質無料でやるわけですから。ですが、僕たちが考えているヨガの本質だとか、人間にとって大切なことなどを伝えながらやっていくので、そういう共通意識を持ったインストラクターを育てられることはとても重要です」

共通意識を持った人材を育成することと、もうひとつのねらいが野澤にはあった。それが、「スピード感のある店舗展開」を見据えていたことだ。

野澤 「スピードを上げて店舗展開していきたかったので、まずは人を集めようと。だから、未経験者も募集して、社内で養成することにしたんです。最近他社でも、自社で養成講座をやっているところはありますが、僕たちは最初からその方針だし、養成プログラムも丁寧につくって、イチから教えてきました」

外部インストラクターを使わないという大きな挑戦もいとわない。野澤の強い意思は、ヨガによって、人々に本当に豊かな暮らしを提供したいという熱い思いに支えられていた。

なぜヨガが必要?歴史が語る、人間にとって最も不可欠なもの

野澤が出店を加速したかった理由。それは、今の社会にヨガが必要だと心の底から感じているからだ。

野澤 「今、心の問題を抱えている人が圧倒的に多いですよね。生きていると、思い通りにならないことは多い。でも人生で起こることを自分でうまくくぐり抜けられる人って、意外と多くないんですよ。
病気とまではいかないまでも、みんな何かしらの心の問題を抱えて、心地良く生きられない。それが実態なんです。そして、そこを解決できる手段として、僕はヨガを考えています」

なぜ野澤はここまで言い切れるのか。ヨガの歴史を振り返っていくと、その理由がよくわかる。

ヨガは4500~5000年の歴史があるといわれる。健康にいいとされるスポーツでもせいぜい数百年。長く人類に必要とされてきた宗教でもその歴史は3000年ほどだ。それなのに、5000年経ってもヨガはいまだ全世界に広がっている。

野澤 「しかも、今も消えるどころか、根を張ってるじゃないですか。そこには何らかの根拠が必ずあるんです。人々に必要とされてきたっていう。 5000年という年月が、ヨガがいい加減なものではないということを示す何よりの証拠ですよね」

ヨガのポーズには一つひとつ意味と効果があることをご存知だろうか。「眠れない」「腎臓が悪い」など、個人の健康上の悩みに対して、それぞれ劇的に効くポーズがあるとされているのだ。

体に血液が流れてきて、まるで漢方薬のように効くとされる。逆に、「どこかが悪い」という自覚がなくても、あるポーズが取れなかったら、「ここが悪い」ということもわかってしまうのがヨガのすごさである。

野澤 「人間は本来、体の不調を自力で直せる力を持っています。なのに、すぐに医者に行って、薬を飲んでも、一時的な解消にしかなっていないことも多い。医療の力に頼ってばかりでは、心も体も強くならないんじゃないでしょうか。
ヨガは体の健康にとても効果があるとされているし、瞑想だったり、終わった後の充実感という形で心の健康にもつながる。だから僕は本当に、ヨガをすべての地域につくっていきたいんです」

野澤がこだわる「心と体の健康」。この実現のためには、ヨガが必要なのだ。そして、その思いを日本全国に広めることが使命と考えている。

地域に根を下ろし、ヨガが生活に溶け込み、人々に心豊かな暮らしを

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▲ヨガスタジオの様子

立ち上げから約2年が経った2018年7月現在。「AMI-IDA(アミーダ)」は、26店舗まで伸びている。ここから100店舗、1000店舗を見据えて成長していく予定だ。

もちろん、ここまでがすべて順調だったわけではない。1店舗つくるたびに壁が立ちはだかっているのが現状だ。

野澤 「事業を膨らませようと思うと人がたくさん必要です。その一人ひとりに、“自分ごと ”として、ヨガの良さや本質をお客様に伝えられるようになってもらわないといけない。
月 1回の全体集会の場などで、僕はそういう思いを、繰り返し繰り返し社員に伝えています。でも、何度も言ってもすべて届いたとは言えないので、これはやっぱり僕の役割としてやらなきゃいけないことだと思っています」

ヨガは何のためにあり、なぜこれを推し進めようとしているのか。訴え続けるための道のりは決して楽ではないだろう。実感値では、ゼロ地点からようやく少し進んだといったところだ。

野澤 「いろいろな角度からの課題があって、大変ですよ。僕も自分を見失いそうになることはあります。だからこそヨガをやらないとダメだなと。
ヨガって、自分と向き合う時間なんですよね。ヨガを通して自分と向き合うことで、心を強めていける。だから、みんなにも体感してほしい。手遅れになる前にこの魅力を伝えたいんですよ」

野澤が思い描くのは、日本全国の各駅停車の駅にまで、店舗を置くこと。それはアメリカに行った際、キリスト教の教会がいたるところにあるのを目にした体験から導き出した結論だ。

野澤 「教会がそんなにあるのは、生活者の心の拠りどころになっているからなんだろうと思います。そこにあることで、みんなが安心して生きられる。僕は宗教じゃなくてもそういうことはできると思っていて、それが『地域ヨガ』だと考えています。
よく『何でそんなに出店を加速するの?』って聞かれますけど、それだけ困っている人がたくさんいるってことなんです。『困っています』って手を挙げてる人がいっぱいいる。僕にはそれが見える。だから、人が普段生活をしているところに根を下ろしていきたいんです」

野澤がこれまでけん引してきたアート事業と、ヨガの共通点は人々の「心の健康」に寄与する点。だからこそ、ヨガを社会に広めていきたいと強く願っているのだ。

一見離れた分野でも、根は同じ。アートとヨガがもたらす「心の豊かさ」

心の健康を打ち出しているフィットネスクラブは、決して多くはない。だが、「健康」とは心身のバランスであり、特に「心の健康」は重要なものだ。そこに着眼した点に、他社との違いがあると野澤は感じている。

野澤 「心の健康を大事にするという点ではアートも同じです。暮らしの中にアートが 1枚入るだけで、そこにムードが漂ってくる。『何でたかが 1枚の絵でこんなに部屋の空気が変わるんだろう』と思うほど、一目瞭然なんです。その空気を毎日吸って生きていくとしたら、わずかな差が積み重なって全然違う暮らしになりますよね。
僕は、アートも『物の豊かさから心の豊かさへ』というところではじめたわけです。だからヨガとアートは、一見かなり離れた分野には見えるけど、根は一緒なんですよ」

野澤が事業を通して大切にしていることは、人間として生きるうえで一番大事な「心の豊かさ」なのだ。それは、進化するにつれて見失ってしまいがちな人間本来の部分でもある。

野澤 「今は、自分だけ良ければいいなんていうのが通用する社会じゃないですよね。だけど、じゃあ、自分のことだけでもモヤモヤしていっぱいいっぱいの人が、他の人を助けられますか?それはできないですよね。経済が発展すればするほど、そのバランスは崩れていくんじゃないかと思います。
便利さや物の豊かさだけじゃ幸せになれない。物心両面、そして心身両面のバランスが取れて初めて、『生まれてきてよかった』『生きてることってすばらしいな』って思えるんじゃないのかな。僕はそう思います」

ヨガの5000年という歴史から見れば、この事業は些細なものかもしれない。ヨガ全体の何かに貢献できるかも未知数だ。だが、ヨガを生活の中に取り入れることができれば、今問題を抱えて苦しんでいる人が圧倒的に少なくなる。野澤は、そう信じている。

野澤 「生き方自体が変わります。自立した暮らしの中で、健康かつ喜びに満ちた人生が送れる。そういう事業を僕はしたいんです」

日本人の生活の中に、自然にヨガを取り入れる。そして、多くの人に、その先にある心豊かな生活を送ってもらう。

そんな日々を熱く描いて、野澤はこれからも溶岩ヨガとともに走り続ける。

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