「ビジネスを超越した、実現したい想い」溶岩ヨガで実現する“心と体の健康”(前編)

30年以上、アート業界をけん引し続けている野澤克巳。アートとは無縁のヨガに寄せる野澤の想い。なぜ溶岩ヨガ事業に関心を持ったのか。ビジネスを超越して成し遂げなければならない“心と体の健康”とは。ヨガに魅せられた男・野澤克巳とヨガの不思議なつながりに迫る。
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アート事業をけん引してきた経営者は、なぜヨガをはじめたのか?

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▲代表取締役会長兼社長・野澤克巳 ©️Hideyo Fukuda

当時、業界の常識を打ち破るビジネスモデルでアート業界の台風の目となっていた野澤。ビジネスに没頭する中、幼少期からの運動好きが高じて、健康のために足を運んだフィットネスクラブ。そこで野澤が選んだのはパーソナルトレーニングではなく、ヨガのレッスンだった。

野澤 「自分でも不思議なんです。時間があまり取れないときでも、インストラクターさんにマンションに来てもらって、熱心にやっていましたから。気づいたらハマっていたんですね。本当に不思議なもんです」

知らず知らずのうちにヨガの魅力に惹かれ、気づいたときには、インド人のヨガインストラクターに1年半、マンツーマンレッスンを受けていた。

野澤 「ヨガって、形がすごくきれいですよね。筋肉がきれいに伸びていると、均整が取れていて、かっこよくて、美しい。それを見て僕もやりたいと思ったものの、実際にやってみると、最初はもうとんでもない。全然できなかったんですよ。でも、終わったときに何とも言えない充実感があってね。それが本当に気持ちよかったんです」

そして、自身のヨガ体験を通じてひとりでも多くの人にその魅力を届けたいと思い、ヨガスタジオを事業として立ち上げたいという気持ちを、当時のインド人インストラクターに打ち明けた。

野澤 「『真剣にヨガの道を進みたいなら、アシュラム(『精神的な修行をする場』という意味のヨガ施設)に来なさい』と言われたんです。まぁ、行きますよね、本質を知りたいと思ったら。それで、インドのリシケシのアシュラムに通い、ヨガの生活を体験してきたんですけど、これが大変だった。
なんたって、お酒もダメ、肉もダメ、出される食事はまずい。わけもわからないまま、とにかくしきたりに従って過ごしたけれども、何とも言い表しがたい、とても神秘的な体験でしたね。
たった 1週間だったんですが、そこでの経験が、独特の空気を僕の中に宿したような気がしているんですよ。本当に大変な 1週間でしたけどね」

本場のヨガを肌で感じ、自身の体験を通じて募った想いを実現するため、13年前の2005年。代官山に初めての常温ヨガスタジオを立ち上げる。

立ち上げたスタジオは3年で撤退……しかし、ヨガとのつながりは感じていた

日本人インストラクターと一緒にヨガスタジオをつくったが、なかなか人が集まらない。当時、日本のヨガの市場はまだそれほど大きくなかった。それに加え、野澤が立ち上げたのが常温のヨガだったということが、伸び悩みの大きな要因と考えられた。

ヨガは、常温のヨガとホットヨガという分け方ができる。ホットヨガは、空調で部屋を暖めて行なうため、体が硬い人でもそれなりに筋肉が動くようになる。汗の量も常温ヨガの比ではない。初めての人でも、実感が得られやすいという良さがあるのだ。

野澤 「一方で常温のヨガは、『アーサナ』と言われるポーズを一つひとつきちんとつくっていくのがポイントです。それぞれのポーズには意味も効能もきちんとあるんですが、初心者や体の硬い人には少しハードルが高いかもしれない。つまり、継続のしやすさで言うと、ホットヨガの方がいいんです」

野澤は一度、ホットヨガスタジオも開設したことがある。すると一気に人が集まってきた。彼はそこで、ホットヨガにシフトチェンジすることもできた。だが、ビジネスパートナーだったヨガインストラクターは、常温のヨガに強いこだわりを持っており、ホットヨガでの出店を快くは思っていなかった。

野澤 「『ホットヨガをやるんだったら、この話はなかったことにしたい』とパートナーに言われてしまったんですね。でも実際には、 3店舗出した常温のヨガスタジオは赤字続き。ヨガインストラクター養成講座というのも少しやってみたんですが、ビジネスとしてはまったくうまくいかない。甘くはありませんでした」

立ち上げから3年。こうして野澤は、ヨガスタジオから撤退することを決めた。ヨガとのビジネス的なつながりは切れていた。リセットして、本業であったアート事業に集中してやっていこうと、整理をつけた野澤。

だが、それでも野澤とヨガは、無意識につながっていた。

野澤 「たとえば、アート関連の知り合いが、いきなりホットヨガスタジオをはじめたり、当社に新卒で入ってきた社員が、ヨガスタジオに転職していったり。アートにかかわる人間っていうのは、どこかヨガに惹かれるものがあるのかもしれないなあと、今は思えば感じますね」

ヨガとの不思議な縁を感じていた野澤。転機が訪れるのに、そう長い時間はかからなかった。

もう一度事業をするなら、ダントツに効果を感じた「溶岩ヨガ」で

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▲社員と談笑する野澤

野澤が2006年に柏の葉キャンパスでオープンした総合フィットネスクラブ「カルナ フィットネス&スパ」。さまざまなプログラムを用意しているフィットネスクラブだが、その中でもやはり、ヨガは人気があることを感じていた。

運営を続けるうちに、フィットネスクラブの中にあったスペースを利用して、人気があるホットヨガを少し広げてやってみるのはどうかという話が持ち上がる。

野澤は、そこでもう一度、ヨガを見つめてみたいと思い直した。そして考えた。「すぐにホットヨガに絞らず、いくつかのヨガを体験しよう」と。

野澤 「体験したうちのひとつが、溶岩ヨガだったんです。溶岩ヨガはもうダントツに良かった。何が違うって、空気が澄んでいるんですよ。暖房のホットヨガでは、空調を使って部屋を暖めて、空気を閉じ込めるので、どうしても空気が濁ってしまう。汗も出るからなおさらです。
ところが、溶岩は空気がそのままだから、とても澄んでいる。ヨガは呼吸が本当に重要なので、空気が澄んでいる方が体に良いのは当然ですね。
汗の量もまったく違いましたよ。溶岩は、要は温泉と同じで、体の芯、つまり臓器を温める。だから、汗が出やすいし、半身浴の後みたいに、熱がなかなか冷めずに長続きする。これを暖房で肺や体の表面だけ温めてしまうと、すぐに熱が逃げてしまうんです」

溶岩ヨガと似た効果があるとされるものに「岩盤ヨガ」がある。空調を使わないところは同じだが、溶岩はマグマが固まってできたものであるため、高温で遠赤外線の放射量も多く、バナジウムなどのミネラル成分が多く含まれている。これにより新陳代謝は高まり、より大量の汗が出ると言われているのだ。そこが溶岩ヨガの大きな魅力となっている。

野澤はそんな溶岩ヨガに心を打たれた。そして、溶岩ヨガの魅力をあらゆる人に伝えたいと「事業としてやるなら溶岩ヨガだ」と決意した。

コストはかかっても、いいものを提供したい

溶岩ヨガの魅力を知り、意気込んでいた野澤。しかしすぐに、現実はそう甘くないということを突きつけられた。ホットヨガなどと比べて、溶岩ヨガは世間に浸透しているとは言えない。

溶岩ヨガは効果が大きいとされ、体にも優しいと言われているのになぜ今まで多くの企業が着手してこなかったのか。

野澤 「その大きな理由は、コストにあったんです。暖房で温めるホットヨガと違って、溶岩ヨガは溶岩自体を各店舗に取り寄せて設置しないといけない。溶岩の輸送コストがかかる分、採算がとりにくい。そういうビジネス的な欠点がありました」

「数店舗だけならいいけれど、多店舗展開するには難しい……」。多くの企業はそのように判断して、大々的な事業展開は行なっていなかった。

野澤 「だけど、僕はやっぱり溶岩ヨガでチャレンジしたいと思ったんです。他の企業と同じことをやるよりは、多少コストがかかるというリスクを負ってでもやってみたいと。少しでも健康に良い環境を提供して、質の高い溶岩ヨガを、多くの人にぜひ体験してもらいたい。
僕は学生時代からスポーツをしてきましたけど、スポーツから学んだことのひとつに、『正面から戦うこと』があります。裏からや斜めからではなく、正面から、正々堂々と課題に立ち向かうということです」

彼自身の実感として、溶岩ヨガは人々の心と体の健康に大きく寄与できるものだと確信があった。だからこそ、それをより多くの場所で提供するために、なんとかしてビジネスを成立させよう。野澤の決意は揺るがなかった。

そして、2016年7月。流山おおたかの森で溶岩ヨガスタジオ「AMI-IDA(アミーダ)」の1号店がオープンとなった。多店舗展開を見据えた野澤の挑戦は、ここからはじまったのだ。

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