結婚、出産、子育て……女性のキャリアを“ゼロ”にさせない「就活美人」の道のり

女性に特化した採用と人材育成を支援する会社を2014年に創業したUA Links。女性に絞ったのは、創業者であり代表取締役の廣岡絵美自身が出産後、二度に渡り女性の再就職の困難さを目の当たりにしたから。真の意味で、女性も活躍できる社会にしたい、企業変革をしたいという想いが、廣岡にUA Linksという会社を立ち上げさせました。
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きっかけは不当解雇ーー面接対策と内面育成、どっちが大事?

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大学での最後の講義
「内面の育成なんて、そんなのいらない。まず内定だよ」

ある大学のキャリアセンター担当者のこの言葉に、廣岡絵美は絶句しました。当時、廣岡は講師として大学で授業をもっていました。起業前の約7年間、大手エアラインを出産退職後、学生向けの“就活塾”などを主宰するかたわら、さらにフリーランスで大学や企業で講師を務めていたのです。

あるとき、講師を務めていた大学のキャリアセンター担当者から、学生の内定率をあげるために面接対策を手伝ってほしいと相談をもちかけられます。

廣岡は、面接対策よりも大切なことがあると考えていました。結局、目先の取り繕いをするから落ちてしまう。本当に必要とされる人材へと、内面から作り変えていくことが重要なのです。そんな取り組みをしている大学は他にありませんでした。

ところが、この想いを伝えたところ、冒頭のように担当者は一言で切り捨てたのです。

廣岡 「それはないだろうと学長室に飛び込みました。学生たちにとって本当に必要なものは何か。私の想いを伝えました。すると学長も賛同してくださって明日から一緒に就活を変えていこうと強く握手を交わしたんです」
ところが、想いが伝わったと安心した廣岡を、翌日待っていたのは突然の解雇通達ーー。キャリアセンターを飛び越えて学長へ話を通したことが担当者の怒りを買ってしまったのです。まったく身に覚えのない不祥事を理由に、廣岡は不当解雇。それは就職活動解禁を1か月後に控えた時期のことで、誰よりも困ったのは学生たちでした。

全力で学生たちを愛しているーーその想いが支えになった

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学生たち・協力企業様とのバーズデーパーティ
廣岡の不当解雇の報を受けて、それに反対する90名を越える学生が、学内で暴動を起こしました。それはやがて、警察も出動するほど大きな騒ぎに……。それでも解雇の決定は覆ることはありませんでした。

廣岡 「こんなふがいない終わりかたで、それも就職活動開始間際の時期に…。申し訳ない気持ちがいっぱいで。学生たちに伝えたいこともたくさんありました」
それでも大学側が許したのは、警備員、弁護士に取り囲まれた厳戒態勢の中、たった3分間の挨拶でした。

廣岡 「最後は泣きながら“こんな大人にだけはなるな!”と言いました。つまり何の力もなくて追い出される私のような大人には……。結局、私は皆のことを助けられなかった。だからこそ、自分にしっかり力をつけて社会に出ていきなさい、と。背中を見せるのが精一杯でした」
その後、廣岡は「今後、学生と接触したら刑事告訴。学生も逮捕する」と言われ、大学を出入り禁止に。それでも学生をほっておけないという想いに突き動かされるように、まだ残っている3カ月分の授業を、学内に忍び込んで部室や屋外で青空教室としてやり切りました。

廣岡 「ただ学生たちを全力で愛している。その想いが支えになりました。この稀有な体験も、今となっては感謝の気持ちが強いです。なぜなら、これがなければ起業していませんでしたから。起業なんて考えたこともなかったのに、これをきっかけに世の中を変革するんだ!なんて、とてつもない使命感がでてきたんです」
廣岡が起業したのは、この不当解雇劇からたったの3カ月後の2014年3月10日でした。

就活成功者だったのに……二度に渡る不採用の嵐だった再就職

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女子学生へのキャリアトレーニング塾
起業時に支援対象を女性に絞ったのには、廣岡自身の実体験がありました。廣岡が就活をしていた時期は、当時100社受けて1社内定をとれればいいという就職“氷河期”時代。それもあり当時の廣岡は、勝ち組になりたいと考えました。

といっても、当時はアナウンサーかエアラインスクールしか就活スクールはなく、「自分はアナウンサーではないな」という軽い気持ちでエアラインスクールを選択。そして廣岡は大手企業30社の内定を手にいれます。

廣岡 「エアラインスクールの講師の先生がステキで憧れていたんです。自分も同じような講師になりたいと思い、内定30社の中の大手エアラインに就職しました。航空業界に勤めないと講師になれないかもと思って。そんな単純な理由でした」
廣岡の理想はあくまで講師。だから入社後半年で妊娠がわかったとき、グランドホステスというキャリアへの執着はなく、すぐに寿退社を選びました。超氷河期に30社の内定を得た廣岡には、再就職もそれほど難しい印象はなかったのです。ところが出産後、25歳で再就職しようとしたとき、大きな壁にぶつかります。

廣岡 「ひとつも受からなかったんです。25歳の子持ちでは、受付などの仕事は受かっても、責任のある職種はことごとく落ちました。子どもをもって働くことがいかに難しいかを身をもって知りましたね」
そして、個人事業主として働くことを選ばざるを得なかったのです。しかし、29歳でシングルマザーになった廣岡は、安定を求め、もう一度就職を試みます。

しかし、そこで新たに出会ったのは、シングルマザーに対する差別でした。

廣岡 「シングルマザーの地位がいかに低いかも感じたし、反対に“シングルマザーだから甘えるな”と言われたこともあります。なんだか不平等な世の中だなと。だから、UA Linksは女性を対象に絞りました。女性はライフステージによってキャリアがいったん止まってしまう。その事実を知って、そこに対応できる力を女性につけてもらいたいと思ったんです」

“あなたは、人生をどんな風に生きたいか?”

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新卒採用内定式のため、沖縄へ。(就活美人大学第一期生)
2016年3月には、廣岡は女子学生対象のインターネット上の大学、「就活美人大学」を立ち上げました。この“美人”という言葉には、自分の成長のために努力できる。そんな成長意欲を持った内面の美人を表現したいーー。そんな廣岡の想いが込められています。

この大学では、さまざまな大手企業に参画いただき、キャリアに関する講座を開講。学生は無料受講が可能です。実際に各企業が社内研修で扱う講座もあり、将来のキャリア設定に非常に役立つと学生からも喜ばれています。その学生たちに、廣岡は、自分だけの、自分の強みとなるスキルを身につけることを強く勧めています。

廣岡 「2020年の東京オリンピックに向けて超売り手市場が続きます。おそらく内定も取りやすいでしょう。ただオリンピック後、景気は悪くなります。そのころ、今の大学4年生は20代後半。その年齢で転職を考えようと思っても、スキルや強みがないと、どこからも相手にされない。そのとき、スキルを身に付け成長できた自分であるためには、今どんな企業を選ぶのか、そこをしっかり考えてほしいですね」
この「就活美人大学」の第一期生でもあり立ち上げにも参加した学生が、今UA Linksの新卒採用第1号として働いています。創業から3年目の2016年現在。廣岡がもっとも嬉しかったと振り返るのは、この社員が入社してくれたことでした。

廣岡 「彼女は学生の頃から知っていて、就活美人大学の立ち上げを一緒にしました。彼女自身も就活美人大学を活用して6社の内定をもらったのですが、それを蹴ってUA Linksを選んでくれたんです。“この子なら会社を変えていくんだろうな”と期待していた人材だったので、すごく嬉しかったです。“仲間”が増えたと実感しましたね」
道なき道を切り開き(Unlocked)、そこに新しい道を創り上げ(Awareness)、無限の可能性へとつなげていく(Links)。

これがUA Linksという社名に込められた想い。この想いを胸に「女性が充実して働けるような社会へ、企業改革をしたい」と廣岡は新たな道の先頭を、この瞬間も走り続けています。

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