「釣りを、やさしく。」をコンセプトに事業展開 ーー “釣り専門”サービスで壁に挑む起業家の歩み

2014年に創業し、釣り人の「わからない」「できない」の壁をなくしていく情報サービスを提供するウミーベ株式会社。代表のカズワタベは、ウミーベが 2 度目の創業となる起業家です。 今回は、彼が新たなサービスをつくりだす根底にある「楽しい感情を増やしたい」という想いをお伝えします。
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「釣りは最高の趣味になる!」 釣りをやさしくするために起業

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ウミーベが運営する釣りの総合情報サイト「ツリホウ(釣報)」
起業 3 年目の 2017 年現在、ウミーベはふたつのサービスの開発運営を事業としています。

そのひとつが、釣りの成果(釣果)を共有するスマホアプリ「ツリバカメラ」。大きな特徴は、ユーザーがそれぞれ釣果を記録してつくられる“みんなの釣果マップ”です。釣りたい魚が最近どこで釣れているのか、どうやったら釣れたのかを、いろいろな条件(時期、魚種やサイズ、仕掛けなど)で調べられます。

もうひとつは、釣りの情報サイト「ツリホウ(釣報)」。新製品情報、釣りのノウハウ、魚図鑑など、釣り人の役に立つ情報を毎日更新しています。釣りの情報サイトとして国内最大級で、閲覧者は月間 35 万人以上、月間ページビューは 150 万以上です。

カズワタベがこれらの情報サービスをつくったきっかけは、自身の釣り経験でした。

カズワタベ 「知人に誘われて始めて、ハマってしまったんです。釣れなくても自然に触れるといい気分転換になるし、釣れるとさらに楽しい。それに、食糧を自分で調達した!という実感にも大きな喜びがある。食べて楽しめて、歳をとってもずっと楽しめる。最高の趣味だなって」

ところが一方で、「初心者には難しい」とも感じました。知らないとできないことがたくさんあったのです。道具は何を買ってどう使えばいいのか。どこでどうやって釣ればいいのか......。情報を探しても、インターネット上にはまとまった最新情報が見あたりません。

こうしてカズワタベは、自分自身が困った経験から「他にも困っている初心者がたくさんいるだろう」と考えるようになったのです。

そして「みんなも楽しませたい!」という想いでサービスを企画。チームをつくって資金調達をするために株式会社を立ち上げました。ビジョンは「釣りを、やさしく」。長い歴史のある「釣り」というレジャーを、テクノロジーでより便利で楽しくすることです。

カズワタベ 「たとえばいい釣り場がたくさん見つかったり、やったことのないジャンルの釣りも次々と経験できたり、釣り仲間が増えたりーー。釣りの楽しみを広げていきたいですね」

根本にあるのは「みんなも楽しませたい!」という想い。なぜそう考えるのか、それはカズワタベが歩んできた、これまでの人生とつながっています。

楽しみを制限する“壁”に違和感を感じた少年時代

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バンド時代はギターを担当
少年時代、カズワタベは親の都合で転校を繰り返して育ちました。長野、新潟、山形、栃木、神奈川、東京......小学校だけでも通った学校は 4 つ。そして学校が変わる度に、課されるルールも変わりました。

そのためか、ルールをそのまま鵜呑みにして「これがあたりまえ」とは考えられなかったのです。そして「新しいものはとにかくダメ」というような理由のないルールについては、相手が大人でも先生でもそれがなぜダメなのか納得するまで質問する生徒でした。

カズワタベ 「好きなことや楽しいことを、納得できないルールの壁で制限されるのが嫌だったんです」

こうした経験は、カズワタベが「ルールブレイクして新しいものをつくりたい」「今はできないことを、できるようにしたい」と考える原体験になりました。中学生のころには、将来は自営業をするといっていたほど、自分で仕組みをつくりたいという気持ちが強くなっていきます。

その後は音大に進学。会社経営に出身学部は関係ないと調べた上で、中学高校と続けていた音楽の道に進みました。在学中に組んだバンドは、卒業後にはタワーレコードにポップ付きで CDを置けるほどに。

それは音楽の質はもちろん、打ち出し方を工夫し、それが当たった結果でした。

カズワタベ 「ミュージシャンとしてライブの現場でお客さんを楽しませるのも好きでしたが、『より多くの人にどうやったら届けられるか』に、当時の僕は強い関心がありました」

しかし、当時やっていた音楽ジャンルの流行に陰りがみえはじめると、バンドは解散の方向に向かいます。

そこで 2011 年、知人と共同創業をしてクリエイターを支援する仕組み「Grow!」をつくったカズワタベは、クリエイターの収益化という壁に挑みます。この 1 社目の創業経験が、ウミーベ創業に活かされることになるのですが、それはもう少し先の話です。

前回の経験を生かし、ひとりで創業

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ウミーベのオフィスはその名の通り海辺にある
Grow!立ち上げのときにカズワタベが目指したのは、無名有名にかかわらず「いいコンテンツ」が評価されて広まる仕組みづくり。そしてつくったのは「いいコンテンツ」をつくるクリエイターに「チップ」を贈れるプラットフォームです。この根底にも、世の中にポジティブな感情を増やしたいという想いがありました。

しかしユーザー数が伸びきらず、やがてサービスは閉鎖......。カズワタベは、一度フリーランスとして活動することを選択します。

そして、フリーランス生活の中で出会ったのが「釣り」。次なる“仕組み”の構想を考えはじめま
す。そのとき、Grow!で経験した 数多ある反省点から、彼はある決断を下します。

それは、ひとりで創業すること。軸をぶらさず、すばやくプロトタイピングすることが創業期には大事だと考えたからです。

カズワタベ 「今回の事業は自分のような釣りを始めたばかりの人がペルソナでした。なので、相談して決めると言うよりは、まず自分が欲しいと思うものを作ろうと思ったんです。それをスピード感をもって実行するには、ひとりで創業するのがベストだと思いました」

ツリホウ(釣報)の立ち上げも、サイトをつくれるカズワタベ自身が思いついて、すぐに行動に移したからこそ、すばやいトライアンドエラーが可能になりました。結果、立ち上げて半年で 100 万 ページビューまで成長し、資金調達をするに足りうるニーズを証明できたのです。

カズワタベ「ツリホウ(釣報)は 4 日でつくりました。『ダメなら 1~2 ヶ月で閉じようか』ぐらいの気持ちで(笑)。複数人で話し合ってからつくると、時間もかかるし、コストがかかった分簡単に閉じることもできないんですよね。トライアンドエラーのサイクルの早さは、創業期にはとても大事だと思います」

こうして過去の失敗経験を活かして、ひとりではじめたウミーベ株式会社。2017 年 2 月現在は、社員 7 人の会社になりました。そしてさらに社員を増やして、拡大のスピードを上げています。

釣りの楽しさを、初心者にも、やったことがない人にも伝えたい

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会社のメンバーで定期的に釣りに行っている
釣り人の「わからない」「できない」の壁をなくして、「釣りを、やさしく」していく。この挑戦に終わりはありません。

カズワタベ 「釣りがやさしくなるサービスなら、なんでもやります。釣り人にとって、釣りが楽しくなる、便利になるようなサービスやプロダクトを提供したいんです。ウェブサービスにこだわる必要もありません。たとえば、めちゃくちゃホスピタリティの高い釣り船を経営するとかもありですね」

釣具メーカーとの連携も進めていく計画です。大手メーカーは関西圏や九州を中心に西日本に集中しているため、福岡を拠点とするウミーベは立地的にも便利なのです。

カズワタベ 「釣りをやっていない人には、めちゃくちゃ楽しいので、ぜひ一回やってもらいたいです。意外と身近なところで釣れるんですよ。東京でも堤防とかでスズキやアジが釣れます。自分で釣った魚は鮮度もよくて、めちゃくちゃおいしいんですよ。それにおなじ魚でも海や季節によって味が変わったりして、おもしろいですね」

はじめての人におすすめなのは、サビキ釣りという釣り方です。これだとハリにエサをつけたり難しいことをしなくても魚のほうから勝手にハリにかかってくれて、はじめてでもアジなどが釣れます。小さな針がたくさんついたカゴの仕掛けに、小さなエビを入れて落とすだけなので簡単です。

カズワタベ 「まずは成功体験で釣りの楽しさを感じてほしいですね。最初からルアーとか難しい釣りをやっちゃうと、初心者では釣れずにめげてしまいがちです。最初の壁を超えて上達していくほど、楽しみ方も広がっていくので飽きません。きっと最高の趣味になると思います」

元ミュージシャンの起業家、カズワタベ。「楽しい!」というポジティブな感情を増やしていくために、釣り人にとっての壁に挑戦していきます。

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