「全員複業」のスタートアップが見つけた新しいイノベーションのかたち

2017年4月、“女性の感性を活かす事業をつくる”ことをミッションにuni’que(ユニック)を創業した若宮和男。女性向けサービスに特化し「全員複業」のスタートアップとして、これから描く未来と事業への想いを、若宮自身が語ります。
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今の環境が働きにくいなら、前提ごと違う会社をつくればいい

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▲uni'queのメンバー(一番左が若宮和男)

女性がメインの会社をつくることにした理由は、これまで自分自身が大企業の中で新規事業の立ち上げに携わってきたなかで、女性が企画した良い事業が実現されないなど、日本の企業の中では女性が活躍しづらい環境をたびたび目の当たりにしてきたからです。

また、育休を終えた彼女たちが「時短」という働き方の中、肩身の狭い思いをしている場面に違和感を感じることもありました。

ママとしても、ひとりの働く女性としてもバリューを発揮しているにもかかわらず、なぜ遠慮しなければいけないのか。「時短だからね」という言葉を聞くたび、怒りすら湧くことも……。

企業はまだまだ男性の目線で動いているように感じます。その中でライフステージに変化が起きる女性が柔軟に働くのは難しくなる。

それなら前提から変えて、「全員複業」、そしてuni’que独自の「バンドスタイル」というルールを定めることで、彼女たちが感性を活かして活躍できる環境をつくろう。そして旧来のルールが及ばない、女性が中心となり働きやすい事業にしてしまおうと考えました。

2018年12月現在は、オリジナルネイルをつくれるアプリ「YourNail」をひとつめのサービスとして提供を開始しました。事業開始から10カ月で雑誌東洋経済「すごいベンチャー100」への選出や、バンダイナムコアクセラレータプログラムでは、応募170社中6社に選ばれるなど、多くの評価をいただいています。

期待をかけていただいているぶん、まずはこの事業を成長させて基盤をつくり、次の事業をはじめたいと考えています。

デキる人の仕事=従量労働制の勘違いをなくしたい

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▲カラフルなオリジナルネイル「YourNail」

日本ではまだ、産休や育休はキャリアに対する欠落期間と考えられがちです。そして、長い時間働いた人が良いとされている現状が今も残っているとも感じています。

でも、「モーレツ社員」のように男性がバリバリ働く成功モデルは製造業時代のものでこれからは変わっていくべきなのではないかと……。「専業かつ多く働くほどいい」という考えは幻想で、これからの未来は企業の境界は溶け、複業が当たり前になると思っています。

企業のマネジメント層はまだまだ男性が多く、ロジック重視で目的志向型の意思決定がされがちです。そして仕事の“量”で評価されるのも、男性目線の社会ならではの考え方だと思います。

一方、女性は感性的で共感志向の発想が得意。女性とは考え方や発想が違うことを知ることで、彼女たちの事業アイディアや働き方について否定することもなくなるはずですし、“量”ではない活躍の仕方も評価されるようになります。

一本の軸しか無いと考えるから、女性がマネージャーになろうとするとハードルが高いように感じてしまう。でも、実は見えていないだけで別のコースもたくさんあると思います。たとえば、ある女性にinstagramの運営をしてもらったら一瞬でファンを増やしたとか、「時間」ではなく「センス」や「感性」で貢献するような方法だって、絶対あるはずなんです。

実際に、uni’queで育児と仕事を両立している加古萌はこう語っています。

加古 「uni’queで働きはじめる前は、仕事の面白さと子育ての大切さのどちらを優先すべきかモヤモヤしていたこともありました。
女性はマネージャー職に尻込みするところもあると思っていて、仕事は頑張りたいけれど踏み込みすぎると子育てとのバランスが取れなくなる可能性があり、何かあったときにリカバリーに手が回らない危険性が出てきます。
子供を持ってから、今までは躊躇しなかったことに対してまでもなんとなく踏みとどまっている自分に気づいて、どうしたものかなと……」

そんな加古、uni’queに参加してから仕事や育児に対して、ポジティブに捉えるようになっていました。

加古 「uni’queに参加してからは悩みがクリアになったというより、モヤモヤする原因だった仕事や家庭の時間のバランスを固定させず、状況に応じて変化させていくことが大切だと思えるようになりました。
それによって、状況をそのまま受け入れられるようになり、女性でも十分活躍できるという実感もあり、今の自分に対する肯定感が高まりましたね。
今後もより自分が関わるものを柔軟に変えていきたいと思うようになりましたし、子育てと仕事の境界線も溶かしていけたらいいなと考えています」

女性の「なんかいいよね!」は、僕ら男性には理解しきれない

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▲生放送事業「Schoo」に登壇することも

これまでの職場でも、女性向けサービスのリーダーを多く経験してきました。

その中でたびたび体験してきたのが「ロジックとして説明はできないけれど、女性スタッフが『これ、なんかいい!』と共感したものは売れる」という現象。僕ら多くの男性はその一連の流れを見ても何でそうなるのかが理解できないんですよね(笑)。共感できる理由すら、わからない。

たとえば、LINEが、他の同様な無料通話・メッセージサービスより後のスタートでありながら、一気に浸透していったのは、スタンプ機能で“女性の気持ちをつかめたから”なんですよね。僕ら男性にとっては、キャラクターのスタンプが、チャットにどんな効果をもたらすかなんて全然わからなかった。

でも、あのスタンプがあったからこそ、長時間お喋りして時間を共有したい女子高生などの若い層に加えて、お話好きの女性たち多くの年齢層に刺さったわけです。

それは、女性がカフェで時間を忘れ、結論の出ないお喋りを楽しむのと一緒。たぶん、その時間を共有することに意味があると思います。そんな感覚を男性が理解するのは難しい。それなら、女性向けサービスは女性に任せてしまった方が成功確率は高い。

たとえば、女性に「AとB、どちらのデザインがいいですか?」と言われても、ぶっちゃけ僕には差分がわからないこともある。女性なら共感できる可愛い色や、フィルターがあるように思うんです。

そこでuni’queでは独自の「バンドスタイル」を採用しています。

これまで女性の感覚やニーズがわからないのに、わかったような顔をして指示をしていた自分の違和感。女性が活きる事業をつくる企業であるからこそ、男の僕が意思決定をするのではなく、各メンバーに決定権を託したのです。メンバーが自分の担当領域においては、CEOを超えた決定権を持つようにしています。

指揮者ひとりで全体を統率するオーケストラに対し、バンドはそれぞれの楽器のメンバーが、自発的に演奏することでシナジーを生む。それぞれの個のバリューを発揮して、自発的に意思決定することで、価値を生んでいくスタイルです。

それぞれの強みが活き、決断のスピード感が上がりました。そして何より、メンバーが事業を“自分ごと化”でき、やりがいにつながっているといいます。

「全員複業」が生むこれからの可能性

メンバーを「全員複業」としたことについては、事業をしている先輩たちにも大反対されました。でも、多く働いた人が偉いという考えをひっくり返すためには、働く量じゃないところで成功する実例をつくるしかないと思ったんです。

全員が複業スタイルになったのは、最初はたまたま。集まったメンバーが他にも仕事を持っていたんですよね。このチームをマネジメントしたり、経営していくときに、自分が複業をしていなかったら「もっとうちの会社にも、ちゃんとコミットしてよ」と思ってしまうのではと。

もしそうなってしまったら、長時間働くほど評価をされる会社と変わらなくなってしまう……。だったら、自分も複業をすることでみんなの気持ちがわかるようになるだろうと、自らも複業し「全員複業」をルールとして採用しました。新しいメンバーを採用する際も「複業」を条件にしています。

今までも「ママ業をしているのは複業と同じ」、「育児に時間を使うことを、申し訳なく感じる必要はない」と言ってきてはいたのですが、実際に複業をしてみて実感したことがたくさんありました。

他の仕事で頭がいっぱいで打ち合わせを飛ばしてしまったこともあります。

「YourNail」のサービスを出したばかりのときには、ローンチと自分自身の複業会社への入社、講師の仕事、さらに家族の不幸と4つくらいの出来事が重なってしまい……。サービスがはじまったばかりだというのに、2日くらいはまったく考えることもできませんでした。

複業ってこういうことが起きるのか……と実感できたことが、今となってはメンバーの働き方や気持ちを考えるうえで、とてもプラスになったと思います。そして、複業って必ずしも働く場所が多いからバランスが難しいわけではないということもわかりました。

いくつかの仕事をしていても、自分の中で比重をかける割合が一定に保てていれば問題はありません。問題なのは不測の事態でその割合が崩れたとき。複業をしていると、不測の事態が起きるポイントが多いんですよね。ちっちゃい爆弾が沢山あるというか。

でもそれは実は専業していてもあるんです。どれだけ準備をしても、子どもが病気になるとか不測の事態が起きれば、バランスが崩れることはある。要はそういう可能性があるってことを前提に、マネジメントしなくてはと心から理解できましたね。

これからの世の中は、ライフスタイルの割合に対して柔軟に対応する働き方をつくっていかないといけない……。「複業スタイル」だからこそ、大企業で活躍している加古のようなメンバーに働いてもらえています。

もし専業であれば、半年かけて説得しても「NO」と言われているような優秀な人材をリクルーティングできていることは大きなメリットです。

また、メンバーが「複業」していることでシナジー効果もあります。大企業で働くメンバーのネットワークで、提携につながったり、広報効果で言うと他社で築いたメディアリレーションで取材につながったりしたこともあります。

常に外の風が入ってくることで、アイデアに多様性が生まれ、創造性も向上しています。一緒に働く仲間についてもそうなのですが、クライアントさんやユーザーさんの感性も頼りにしています。

「YourNail」でいえば、ユーザーさんの登録によって3万点以上のネイルデザインが集まっています。それはユーザーさんの感性が集まった結果ですし、百貨店や企業とのコラボデザインをトップユーザーさんに担当してもらう展開も生まれています。

こうした動きによって弊社の社員だけでなく、専業主婦だった方が企業ネイルのデザイナーとして活躍できる事例もどんどん起きているんです。

今後はuni’queとしてYourNailをさらに成長させて、グローバル企業を目指していきたいと思っています。女性が事業を発案することが当たり前で、その事業をどんどん立ち上げていける会社に育てていきたいです。

女性の子育てや仕事の垣根を溶かして、チャレンジがしやすい世界に……。そして、ゆくゆくは女性起業家への出資や、メンタリングも行なって支援し、これまで当たり前だった男性的な活躍の仕方とは違う、いろいろな女性の活躍のかたちを日本に、そして世界に届けるリーディングカンパニーを目指していきます。

“que”(地球=globe)の中に”uni”(たった一つ)のユニークなものにあふれた世界。

女性の活躍は、世界をもっとユニークに、カラフルにできる可能性を持っていると、僕は信じています。

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