残高はいくら? 経営者を精神的ストレスから解放する「board」が2周年を迎える

2010年末に創業したヴェルクは業務を拡大するにつれ、面倒な事務作業に頭を抱えていました。そこで試行錯誤を重ね、2014年8月に見積・請求書を起点として、経営をサポートするクラウドサービス「board」の提供をスタート。今回は、2周年を迎える「board」の開発秘話と現在、そして未来をご覧ください。
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経営者としてやりたいことは“本業”。書類を作ることではない

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ヴェルク株式会社は、代表の田向祐介が2010年末に設立しました。田向は以前、フューチャーシステムコンサルティング株式会社(現・フューチャーアーキテクト株式会社)でシステム開発やシステムコンサルティングを行っており、その頃の同期である津久井浩太郎と共にヴェルクを創業。ヴェルクの主な業務は、スマホアプリやクラウドシステムの受託開発です。

創業した頃は、代表の田向が見積りや請求書を作り、案件管理をエクセルで行っていました。しかし、創業から3年ほど経ち、月に20枚ほどの請求書などを出す状況になり、徐々に作業の負担が大きくなっていったのです。

田向「請求書の作成と管理がしんどくなってきました。請求書は月末に出すのですが、システム開発はそもそも月末が忙しいんです。また、経営者としては案件ごとの請求、つまり入金を管理して、キャッシュフローや売り上げの予測を把握しておかなければなりません。それをエクセルでゴリゴリ作っていたのですが、それも限界に来ました」
限界を感じたのは、作業時間が原因ではありません。というのも作業にかかる時間は、実質1〜2時間ほど。それにも関わらず田向が感じていたストレスの正体は、「キャッシュフローは大丈夫だろうか?」「数字に間違いはないだろうか?」という、経営者ならではの精神的プレシャーでした。

そこで、早速クラウドの請求書サービスをいくつか試してみました。請求書はきちんと作れますし、送付もできる。しかし、どれも田向が欲していた「案件や経営の管理」という概念が抜けていたのです。

田向「IT会社を経営している知り合い達にこの話をしたところ、驚くことに、みなさん同じ理由でエクセルを使っていたのです。みんな同じ悩みを抱えていることがわかりました。そこで、そんなにニーズがあるなら、と2013年の8月頃から自社でサービス化してみようと考えはじめました」
翌月には早速案件を登録し、案件ごとに必要となる書類を管理するプロトタイプを製作しました。見積書を登録した時点で、売り上げ見込みやキャッシュフローに反映され、日々の営業活動がすべて連動する、田向が理想とする案件管理システムです。

開発を続け、α版として目処が立ったのが12月です。まずは弊社で利用し、見積もりや請求書を作成。そのあと社内で運用しながら、2014年2月にクローズドβ版として知り合いのIT企業の社長の方々に使ってもらうことにしたのです。

田向「私が経営者としてやりたいことは書類を作ることではありません。書類は事務手続き上必要なのですが、本質的な経営に注力したいんです。このことを言うと、経営者達は非常に共感してくれます。皆さんも本心ではそう思っていたんです」

支払日の残高を表示する、これが経営者のハートをぎゅっと掴んだ

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確度ごとの売上見込みを表示
クローズドβ版で数名の社長の方に使ってもらったところ、とてもよい評判が集まりました。売上見込みを出しているところが、経営者の心を掴んだのです。経営者が把握したいのは、いつ売上があがるのか、いつ入金があるのかに尽きます。つまり、未来の見込みが知りたいのです。

ヴェルクで行っているシステムの受託開発は、見積から納品・請求・入金までのサイクルが長いのが特徴です。例えば納品に3ヶ月かかったら入金まで4~5ヶ月はかかってしまいます。キャッシュフローが長いので、管理を間違えると黒字で倒産してしまうことにもなりかねません。

これらを鑑みても「給料の支払い日にお金が払えるのか」ということが非常に大事。田向は、支払い日の残高を表示させる機能を搭載しました。

田向「最近、経理のユーザーさんから、どうしてこのような変わった管理方法なのか、と問い合わせをいただくことがあります。通常は月末とかの残高を出すのに、管理の仕方が変わっている、と(笑)。 それはこのサービスが経営者のニーズに応えているためだからです」
3ヶ月後、会員登録などの機能を搭載してオープンβ版がスタート。その際、応援してくれるユーザーさんたちが口コミで広めてくれました。ありがたいことに山ほどご要望をいただくことができたので、それを対応しつつ、8月に発注管理機能を追加して、正式リリース。

そして2016年8月20日で2周年になります。「board」というサービス名は、初期の頃から付けていました。

田向「“board“は、ボードメンバーとダッシュボードのダブルミーニングです。まず『board』は経営的な要素が大きいので、取締役(ボードメンバー)という意味。そして、請求書を出したり入金を確認するというタスクを一目瞭然に管理してくれるダッシュボードという意味を持たせました」

ロードマップは全体公開、boardを業務プラットフォームにしたい

料金プランは、Personalで980円/月、Basicで1,980円/月、Standardで3,980円/月と“抑え気味”での金額を実現。基本的には「安い」と仰っていただけることが多く、「倍の料金でも使う」という声もいただいています。しかしこの金額には、田向の強いこだわりがありました。

田向「我々も同じ状況を乗り越えてきたのでわかるのですが、特に起業直後は固定費を抑えなければいけません。バックオフィスのサービスに5,000円以上は払いたくないんです。『board』は自分がほしいサービスを具現化したものなので、その課題も同じだろうと考え、値付けを決めました」
おかげさまで2015年には、開発ロードマップの公開や、問い合わせの即レスとその対応時間の公開などが話題になりました。お問い合わせには最初から即レスで返していたのですが、これはユーザの方の業務効率を考えた結果です。

田向「ときどき、電話でサポートしてほしいというご要望をいただくのですが、私としてはメールの方が早く対応できますし、スクリーンショットを付けて説明できるので、疑問の解決までもスムーズです。そこをご理解いただきたくて、対応時間を公開するようにしました。開発ロードマップは、今後開発する予定の機能を羅列しています。社内のTODOリストでもあるのですが、改善要望をもらったユーザーさんに、『スルーしていませんよ』とアピールする狙いもあります(笑)」
最近は英語文書と外貨対応のご要望も増えています。英語で書類を出したい企業が増えているのです。ドルや元などの外貨に対応するのはレートの概念が出てくるので手間がかかります。しかし、こちらも2016年9月から開発に着手する予定。それ以外にも田向には実装させたい機能が山ほどあります。

田向「今後は、通知機能も強化していきます。請求書の通知が請求日に来ても遅いので、3~4日前までに通知させたいところです。未入金や請求金額の変更など、数十種類のタイミングから指定して、メールやSlackに通知できるようにします。つまり『board」を自動化された業務プラットフォームにしたいんです。既存の会計システムとの連携や、API公開も予定しています」

「board」を作ったことで、昔より忙しくなってしまった経営者

正式リリース後は、毎月有料アカウントが20社くらいずつ地道に増え続けています。一方で、退会するユーザーはほとんどおらず、継続率は99%。現在の有料アカウント数は400社以上となっています。

検索ワードを確認すると、「board」をキーワードにサイト訪問する方が圧倒的に多いことから、口コミで噂が広まったと田向は考えています。

田向「直接の知り合いではないユーザーさんが、勉強会などで紹介したりしてくれているのを耳にしますが、とても嬉しいですね。それに起業家として10年以上先輩の社長の方々から、『今まで見ていた数字が不安だった。boardを使ってみて、こうやって数字を確認すればいいのか、と目から鱗が落ちた』と言ってもらえたことも自信につながりました。我々は、中小企業向けシステムの業務レベルを上げていきたい、という想いがあるので、大満足です」
現在は、まだ受託開発と掛け持ちでやっているので、時間的に厳しいことはあります。田向も、もう少しアクセルを踏んで「board」を加速させたいと考えているようですが、人や仕事量の面でアクセルを踏み切れないのは、やはりもどかしいところです。そして、ユーザー数が増えるほどにサポートの負担も大きくなってくるという問題もあります。

田向「せっかく請求書の作成や管理から解放されたのですが、開発やサポートで、以前よりも余計忙しくなってしまいました(笑)」
当初の目的とは逆の状況になってしまいましたが、多くの人が「board」を使ってくれているということでもあるので、この忙しさも田向にとっては“嬉しい悲鳴”です。

「board」はこれまで田向がひとりで作ってきましたが、今後はメンバーを増強し、さらなるサービス拡大を狙っています。エンジニアは常に募集していますし、マーケティングやセールス系の人材もほしいところ。「良い仲間が集まるといいなぁ」と田向はいつも考えています。

そして、3年後には「board」はどうなっているでしょうか?

田向「その頃にはboardの契約社数が2~3,000社になることを目標としています。そのくらいになると、受託開発の人を減らしてもっとboardに投資できるようになる。周辺の機能もたくさん開発して、多彩なサービスを提供できているといいですね」
「board」は今後も、ユーザーのためにどんどん機能や使い勝手を強化し、経営のサポートをしていきます。将来は数千社の契約を獲得することを目標にしていますが、田向はとても物作りが好きなので、きっとその時がきてもコードを書いていることでしょう。

クラウド型業務・経営管理システム「board」
https://the-board.jp/

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