テレビ愛に溢れ、番組づくりを始めた学生時代

物心ついたときから川嶋は大のテレビ好き。家族みんなでテレビを見て過ごすのが当たり前、テレビはお茶の間に欠かせないものでした。

川嶋 「ちょうどお笑いブームもあったので、学校でも話すのはテレビのことが多かったですね。学校で話題にするためにもずっとテレビを見ていました(笑)」

テレビ好きが高じて、見る側だけではおさまらず、番組をつくりたいという想いが湧き、高校では放送部に入部しました。

川嶋 「ドラマやドキュメンタリーをつくるなどしていましたね。思い出に残っているのは学祭のイベントで最終日に学祭総括ムービーをつくって流したこと。学祭の事前準備から当日直前まで撮ってリアルタイムで編集し続けて、最後にその場でバーン!って流して。みんながめっちゃ盛り上がっている姿は忘れられないですね」

自分が制作した映像で人が喜ぶことに楽しさを感じた高校時代。もっとテレビのそばにいきたい、その一心で地元北海道から上京し、東京の大学に進学することを決めます。もともと理系で大学の学部は情報理工学。学業に精を出す一方で、本来の上京目的である「テレビのそばにいく」ことを果たすべく、放送局でアルバイトのADとして働き始めました。自分の大好きなテレビをもっとおもしろくしたい、常にそんな想いがありました。

ADというと、きついイメージ。しかし、川嶋がその現場で経験したものは予想とは異なる環境でした。

川嶋 「周りの方がすごく優しかったんです。番組の内容も、僕が大学で学んでいる理系分野のことを生かせるものだった。それに、もっと激務かと思っていたのですが、意外にそうでもなく。
当時はスタッフの方と話していると、当然ながら視聴率が話題に上がることも多かったです。そのときは視聴率の会社で働くなんて思ってもみなかったんですけど(笑)」

働きやすさに加え、スタジオでの休憩中も隣でドラマやバラエティ番組を撮影しているなど、テレビ好きの川嶋にとっては楽しく仕事をできる環境でした。

「テレビをおもしろくする」は、テレビをつくることだけではない

川嶋にとってテレビは楽しいもの。そんなイメージに大きな変化をもたらしたのは、あるインターンの経験でした。

高校時代の放送部、大学時代のADの経験から、就職先としてテレビを制作する仕事に携わりたいという想いを強くした川嶋。より実践的な経験を求め、新たにドラマの制作現場でインターンを始めました。

川嶋 「自分にとっては正直地獄でした(笑)。当時のドラマの現場は一日がすごく長くて、動きっぱなしで、座る暇もご飯を食べる暇もない。感情が追いつかなくなって。つくる喜びを感じるよりも、目の前のことに食らいつくだけの状態でした。普段何気なく見ているドラマが、これほどの多くの人の努力と苦労でつくられていると知ったのと同時に、僕には向いていないとわかったんです」

この苦い経験で、川嶋の心境に変化がありました。

川嶋 「そのときに、本当に自分がやりたいことがテレビをつくることなのかわからなくなりました。自分のやりたいことは“テレビをもっとおもしろくしたい”ということで、それは必ずしもテレビをつくることではないのではと気づいたんです。もう少し、テレビを俯瞰的に見ることができる環境が良いと感じるようになりました」

そんな考えになったのは就職活動をするタイミングでした。

情報理工学部に所属し、もともとデータ分析に興味があった川嶋。大好きなテレビにも得意なデータ分析にも関わることのできる企業はどこか?と考えたときに見つけたのがビデオリサーチでした。

川嶋 「応募して選考を受けてみたら、いろいろな運も重なって、トントンと進んで(笑)、内定となりました。業務内容も楽しそう、という感情しかなかったですね。だって大好きなテレビと大好きなデータに囲まれるんですよ。もう楽しみで楽しみで」

しかし、実際に入社すると、入社前に抱いていた“楽しさ”だけではないことに気づかされました。

入社一年目で味わった仕事のつらさ。その状況を変えた、自らの“提案”

▲会社のシンボルである、きつつきの銅像を囲んで

入社して配属されたのは、川嶋の希望していたテレビの分析を行う部署でした。2カ月の新入社員研修を経て、部署に配属後はすぐに先輩について仕事を始めることに。入社3カ月後には仕事をひとりで任されるようになりました。

川嶋 「部署の性質もありますが、同期よりも早い段階でひとりで業務をすることが多くて。そのおかげで一年目ながら責任感がつき、仕事を早く覚えたと思います。一年目が終わるころには、同時並行でいくつもの仕事を受け持つ状態になりました。任せてもらえるようになったとはいえ、まだ一年目。仕事の優先順位をつけるのにも一苦労の日々でした」

仕事の内容もルーティンワークではありません。その仕事ごとに求められているものが異なり、頭を切り替えるのに必死。マルチタスクをこなす一方で、忙しさから今自分がなんの仕事をしているかわからなくなる。これが川嶋の社会人としての最初の壁となります。

川嶋 「あるとき、気持ちを切り替えました。仕事に追いかけられる受け身の姿勢ではなく、本当にお客さんが求めているものを考え、自分から提案していかなければならないと」

そこで考えついたのが、最新ツールを使い、顧客に対してテレビの視聴データをわかりやすく見せるというものでした。

川嶋 「BIツールのTableau(タブロー)の研修を受けたことがきっかけでした。提供方法を変えることでテレビ局さんにとって、より簡単に、いろんな角度からデータを見られて、もっとデータを活用してもらえるのではないかと考えました」

そこで川嶋はテレビ局担当の営業に相談し、顧客への提案が実現しました。最初は見慣れぬBIツールをすぐには受け入れてもらえませんでしたが、新しいデータの見せ方を発見し、提案できたことは川嶋の自信にもつながりました。何より直属の上司や営業担当者が、新人である川嶋の新しいコトへの挑戦自体を評価し、後押ししてくれたことが「嬉しかった」と言います。

入社一年目でさまざまなギャップを感じていたものの、それを自ら行動することで、仕事の楽しさを見いだせるようになりました。

大好きなテレビをおもしろくするための、大きな目標

自分で環境を変えることで、仕事を楽しいものへと変化させた川嶋。そんな川嶋が仕事をしている上で一番楽しいと感じるのは、数字を見ているとき。

川嶋 「データを毎日見ている中で発見があります。あぁ、こんな数字の見方があったんだ!とか、こういう見方をすると課題が浮き彫りになるとか」

昔からずっと持ち続けた、「テレビをおもしろくしたい」という想い。これは、一視聴者のころから変わりません。自分の大好きなテレビが自分を楽しませ続けてほしい。

それを成し遂げるために、次は視聴者としてではなく、テレビのデータを分析する者としてできることを考え始めました。

川嶋 「テレビ局さんにとって一番組ずつ分析していると大変なので、全番組を俯瞰して動向を把握し、KPIとして管理できるプロセスを提供したい。どうしても“視聴率”にいろいろな意味や背景を持たせてしまいがちですが、あらためて“データ”として、テレビ局さんの意思決定の中心になれるものをつくりたいんです。
ただ、今のままでは成し遂げられないと思ってます。統計分析や機械学習系の考え方を応用していきたいです」

テレビ好きであり、理系出身の川嶋ならではの目標です。

2020年現在ビデオリサーチが保有している膨大なデータに、統計学や機械学習の考え方をあてはめることで、新たな発見を導き出すことができる。それをもとに、テレビ全体を俯瞰的に見ることができるプロセスをつくる。それが川嶋が現在掲げている大きな目標です。

データでテレビをもっとおもしろくする。川嶋の挑戦は始まったばかりです。