できるできないはさておき、高い目標値を目指す

▲ウイングアーク1st株式会社 マーケティング本部 TOFD部 部長 松久 育紀

データ活用のテクノロジー企業であるウイングアーク1st株式会社に入社した2016年より、企画メンバーの一員として「WingArc Forum(現WAF)」に松久は携わることになる。

当時は、自社製品を訴求するコンテンツがイベントのメインになっていたため、アピールする先がすでにウイングアーク1stを知っている人や、その製品を使っているコア層に限定されていた。

松久 「2018年にメインで担当することになったときはイベントの潮目も変わる時期で、自分が担当するならもっと幅広い層にアピールするイベントにしたいと思いました。

ウイングアーク1stを知らなくても、データ活用に興味ある人なら参加したくなるようなイベントにするための第一歩として、まずはイベント名を『WingArc Forum』から記号的かつ匿名性のある『WAF』に変更しました」

例年ゴールデンウィーク前ごろから秋に開催するWAFに向けて始動するが、マーケティングの統括責任者が久我 温紀に変わって最初のWAFとなる2019年は、「もっと企画に時間をかけたい」という久我の希望で年明けからすぐに動き始めた。

久我は上層部へ企画を通す前に、松久に会場の規模を大きくしたいと相談し、コンセンサスを得たという。その後、久我から集客数や協賛金に関する高い目標値が提示された際に、松久は「難しいんじゃないですか?」と冷静に反応したという。

松久 「キャパが大きくなると自ずと集客数や協賛金に関する目標も上がるという話はしていました。

しかし例年だと集客数は昨対比で10〜20%増くらいで推移していたものが、いきなり前年対比50%増、協賛金は約5倍集めるとなると、集客に使う費用や協賛社への価値提供を含めたイベント自体の設計を大きく見直す必要が出てきます。

それらを踏まえて「難しいかも」と率直に伝えました。しかし、久我の『イベントを大きく成長させたい』という意欲に加え、『いざとなったら協賛社は俺が協力を取り付けてくる』と約束もしてくれました。なら、『やってみましょう』となりました」

イベントのコンセプトを大胆に刷新

久我の想いを受けて立った松久は、目標達成のためにもイベントコンセプトの変更が必要だと久我に伝えた。

「ウイングアーク1stのイベントではありつつ、うちのことを知らない人にも興味を持ってもらえるコンテンツをそろえて、データ活用に興味のある人なら誰でも来てくださいね、というイベントにしたい」「極端な話、競合他社の人が登壇してもいいくらいの感じでやりたい」と。

松久 「イベントが大きくなればなるほど、主催するウイングアーク1stがその中心にいるという見え方になると思ったからです」

常々 「フェスをやりたい」と公言していたお祭り好きの久我は、松久のこの方向性に賛同。キャッチコピーは「UPDATA!」。データでビジネスや世の中をアップデートするという、ウイングアーク1stが掲げるテーマをひと言で表現した。

松久 「弊社のビジネスに直接つながらないかもしれないけれど、世の中的に『データ活用って必要だよね』『データを使ったビジネスっていいよね』という空気感をつくっていく。ソートリーダーシップを獲っていくための、フラッグシップ・イベントという位置づけにしていくことが2019年の狙いでした」

松久は久我とディスカッションをしながら、久我の想いやアイデアをどんな形に落とし込んでいくかを考えて、マーケティング部のメンバーに割り振り、各パートから上がってくるプランをチェック。プロジェクト・マネージメント的な立ち位置で、全体のバランスを調整した。というと簡単だが、いくつもの壁が立ちはだかった。

松久 「コンセプトを変えたことで対象範囲は広がりましたが、それに比例して久我から思った以上にたくさんのアイデアが出てきてしまった(笑)。

それを全部やるのは予算的に無理なので、予算内で収めるための取捨選択に頭を悩ませました。また、例年よりも協賛プランを大幅に見直したので、新規のスポンサーの獲得だけでなく、例年協賛していたスポンサーに新プランで協賛してもらうのも簡単ではありませんでした」

自社の利益ではなく、イベントの活況を優先する

久我が掲げた集客目標数は9000人。営業部はひとりあたりの集客見込みが立っていたので、それを差し引いた目標値とのギャップをマーケティング部が埋めていく方針を掲げた。

松久 「スポンサーの多くはわれわれの製品を販売しているパートナー企業です。われわれのイベントに参加することで自分たちのビジネスにつながるお客様を獲得することが、スポンサーにとっての1番のメリットです。

会場内が閑散として、スポンサー企業のブースに誰も来ないという状況にならないように、スポンサーチームとスポンサーの想定獲得リード数を算出し、協賛金に対する投資対効果が高くなるような設計をしました」

集客に大きな影響を与えるセッションは、目標だった”昨年の倍”を超える、3倍のコマをそろえた。

松久 「2018年までは、ほぼ同じセッション数の中で、建付けを変えて、登壇者のセレクトをしていきました。

2019年からは会場の規模が大きくなり実施可能なセッション数も増えアピールする層が広がったので、『やりたいこと』と『やれること』のギャップを埋めるためにどうしたらいいか、という発想で取り組んでいきました。

自分が大事にした基準は、自分が来たいと思えるコンテンツがそろっているイベントになるかどうか、でした」

たとえば、大きな会場では自社製品をアピールするセッションを多く配置したくなるところを、ウイングアーク1stのビジネスとは直接的には関係がなくても、多くの来場者が聞きたいであろうセッションは大きな会場に、よりコアなターゲットのセッションは中規模の会場にと来場者のニーズを第一に考えて配置を決めていった。

WAFを盛り上げて、業界内での存在感を示す

高く設定した集客目標を達成し、最終的には1万人以上の集客となった「WAF2019」。松久は、対外的なメリットはもちろん、社内にプラスの効果があったと感じている。

松久 「桁が変わると達成感が大きく違うので、9999人と1万人はたった1人の違いでも、集客1万人を突破したことは大きかったと思います。この会社の規模感がスケールアップしたと、社員に感じてもらえたんじゃないでしょうか。

また、予算を切り詰める策として、イベント当日は経理や開発の社員まで総出で、受付や誘導を手伝ってもらいました。

直接WAFに関与していない部署を含めて会社全体を巻き込むことはここ数年における課題のひとつだったので、自分たちの会社がこういう大きなイベントをやって、たくさんの人が来場している光景を運営スタッフの一員として感じてもらえたことは、インナーブランディング面でもよかったと思います」

「WAF2019」を終えた松久らチームメンバーは、すぐに2020年のWAFに向けて話し合いを始めた。

松久 「個人的には、国内最大のデータ活用のイベントという方向性をより強めて、より広い範囲に向けてコンテンツを届けたい。『だったら社名から脱却して、“UPDATA!“をイベント名にしてもいいよね』と話しています。

あと、前回やろうと思ってできなかったのがクロージングのセレモニー。イベント全体を締めくくるようなセッションにするか、来場者とスポンサーが参加できるパーティーなのかはわかりませんが、『これで終わりますが、これからもよろしくお願いします』という締めくくりをちゃんとしたいと構想中です」

WAFを毎年やり続ける先に描くそう遠くない未来を、松久は静かに、しかしはっきりと語る。

松久 「WAFというイベントを『毎年この時期にやってるよね』『来年は行きたいよね』と、フワッと待っていてくれる人を増やしたい。

ウイングアーク1stは、まだまだ知名度は低い会社ですが、『データ活用といえばこの企業』となったときに、真っ先に名前が挙がるような存在感を示すようになれたらと思います」

2020年のWAF。よりアップデートされたイベントを作るべく、松久はすでに動き出している。

ウイングアーク1stの挑戦はまだまだ続く。