元・救急看護師の代表が、 若くして「訪問看護」事業を起こしたワケ

ウィル訪問看護ステーションの立ち上げ人 岩本大希は29歳(2016年現在)ながら、訪問看護事業所の開設や管理の業務に携わって6年になります。「5年の実務」がないと訪問看護に転職できないといわれる中、どのように訪問看護を志し、若くして事業所開設するに至ったのか……。WyL株式会社代表 岩本大希のストーリーをお届けします。
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救命救急センターで感じた、患者の“家に帰りたい”という願い

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WyL株式会社代表、岩本大希
慶応義塾大学看護医療学部を卒業した岩本は、三次救急を行う大学病院に就職し、救命救急センターの集中治療室に配属されました。

「三次救急の救命センターは、TVやドラマで見る以上に圧倒的にドラマティックな現場です。1分1秒を争う集中治療が行われ、まさに”命の現場”といった、シリアスでやりがいのある職場でした」(岩本)
新卒から救命救急センターに配属され、看護師になった喜びとやりがいを感じたという岩本。一方で、高度医療を受け、一命を取り留め回復した患者が「家に帰りたい」「自分の居場所で家族と過ごしたい」と切に願いながらも、なかなかすぐには退院や転院ができない現実を目の当たりにします。

「自分がその患者さんと共に帰り、自宅での介護や看護を面倒見ることで、もっと素早く、より適切なタイミングで退院ができるようになるのでは、と考えるようになったんです」(岩本)

「救急車のたらい回し」の根源に、衝撃を覚えた

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救命救急センターに所属していたころの岩本
岩本が大学病院の究明センターで働いていた当時、救急車のたらい回し事故が世間を賑わせていました。実際に岩本が所属した大学病院でも、可能な限り救急患者を受け入れることができるように医師や看護師たちが一致団結し、ときには疲弊することもありながらも、その命のバトンを繋いでいたのです。

しかし、どうしてもベッドが空かず、物理的に受け入れができないこともあったようです。

「日本のどこかの施設や病院で1日退院が遅れると、ベッドの玉突き事故により、命を救うために救急車で運ばれる人の受け入れが断られることがある。それに気づいたときには衝撃を覚えました」(岩本)
病棟などにある大部屋のベッドが満室だと、大部屋に送る集中治療室のベッドが空けられず、結果として救急車の受け入れが難しいことになってしまう……。退院できるかもしれない人が家に帰ることができない、あるいは転院先もベッドが空かずに転院することすらできないなど、“玉突き事故”が与える影響は、とても大きなものです。

このような気づきから、岩本は「救急車のたらい回し問題」は救急の問題だけではなく、その根源は在宅医療にもあるのではないか、と考えるようになりました。

看護師として、救急車で運ばれるより前にできること

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ケアの見える化のためにOMAHASYSTEMなど新しいものも積極的に取り入れていきます。
すべからく努力をしても、すべての人を救えるわけではないのが救急医療です。運ばれてこられる方で、高齢な方の心肺蘇生や積極的治療を行うこともあります。家族が気づいたときには呼吸が止まっていたなど、突然のことも多いでしょう。

救急車で運ばれたのち、人工呼吸器のための気管内挿管や、その他の治療の説明と同意の有無をご家族に行いますが、事前に話し合っていなくては本人の意思を確認しようがありません。だからこそ家族はワラをもすがる思いで治療を選択されることがあります。「わからないけど、できることをやってください」とーー。大切な家族の危機に、多くの方がそう仰ると思います。

ただ、そのあとに心臓マッサージで胸骨が折れて陥没し、太い管が口から飛び出て機械につながれて換気され、点滴やその他のチューブが体内にいくつ挿入されていき、沢山のモニター機器に囲まれて、非日常の中で、苦しんでいるように見えつつ亡くなっていくことも、少なくありません。

そんな光景が繰り広げられることをご家族が事前に想像できるでしょうか? たとえば、90年以上生きてきた方の人生の最期が、本当にこれでよいのでしょうか?

「本人、家族、取り囲む医療者、そして医療費を含む社会。全力を尽くした結果、だれも幸せになっていないのではないか? この状況が多発することを許していていいのか? これを解決するには、救急車で運ばれてしまうよりももっと前のタイミングで自分や家族のことを話せることはないのか? そして、そこに看護職として僕ができることはないのか?と問いを持つようになりました」(岩本)
私たち医療者も、救うからには本当に全力を尽くします。ただ、果たして本当にこれは本人が望んだことだったのか。家族はこの選択をしたことで、ショックを受けたり自責の念に駆られてしまわないだろうか。私たちは最善の選択をできたのだろうか……。そして、そのような全力の治療に、多額の医療費が消費され、社会保障費圧迫の要因のひとつになっていることも、目を背けてはならない事実なのです。

最年少所長として訪問看護に従事。そして新たなステージへーー

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新たな事業所でも、24時間365日のサービスを看護師一丸となって提供します。
岩本はこれら原体験の中で、「訪問看護」がひとつの解であると考え、24歳の時に大学病院を退職しヘルスケアベンチャー企業へ入社。史上最年少所長として24時間365日訪問看護サービスを立ち上げました。

土日祝日はもちろん、お正月も定期的な訪問に対応し、がんの末期や神経難病、一人暮らしの認知症の方などへ看護を提供し続けました。

そして岩本は、実際に在宅の現場に出ることで、土日祝日も定期的に対応できる訪問看護ステーションが少ないこと、訪問看護に従事する看護師は就労看護師全体の4%しかいないこと、若手看護職が流入しにくい環境になっていることなどに気づくことになります。

「現場実践と事業運営をしていく中で、これまで僕自身の病院での原体験と問題意識を、間違いなく訪問看護で解決をしていけることに確信を持ちました。だからこそ、日本には訪問看護が増えないといけない、という想いも新たにしましたね」(岩本)
そして2016年4月に前職を退任し独立。東京都江戸川区で新たに24時間365日の訪問看護サービス「ウィル訪問看護ステーション」の提供を開始しました。新たな地でも、すべての患者様が自宅に帰れる選択肢が持てるように、全力を尽くします。

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