大学病院から訪問看護ステーションへーー小児科ナースが訪問看護に飛び込んだ理由とは

小児経験のみの看護師が訪問看護業界へ転職する場合、老年期や小児以外の疾患に触れる機会が少なく躊躇する者も多い。大学病院で主に小児病棟の看護師として勤務していた澤柳匠は、なぜ小児病棟から訪問看護への転職を志したのでしょうか? その想いと転職後の実際のストーリーを澤柳本人がお届けします。
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治療だけでなく成長・育児・発達の場でもあることに魅力を感じ小児科へ

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小児看護は子どもの成長が見れることが本当に喜びややりがいだった
私が看護師になろうと決めたのは、高校生の頃。もともと将来の仕事に特にこだわりは無かったのですが、人と関わって、人のためになる仕事が良いなと思って町医者を志そうと思ったこともありました。

そんな医療に興味を持ちはじめたときに、男性看護師が少ない現状を知って、「男の看護師がもっと増えたら面白いんじゃないか?」と思って色々悩みながらも看護師になろうと決意しました。

無事に看護師の資格を取得したあと配属された先は小児科でした。実は小児科は第三希望。それでも小児科を配属希望の最後に入れたのは、子どもという共通点がありながらも循環器や外科など様々な診療科に関われるからでした。

また学生実習のときに、小児科は治療や療養の場だけでなく、成長・育児・発達の場でもあることを学び、魅力を感じたことが大きな理由かもしれません。

自宅を「怖い場所」にしてしまった小児科での悔しい経験

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趣味の登山。苦しいことも嬉しいこともあったが、プライベートも充実していた
小児科では辛いことも嬉しいことも色々と経験をしました。正直、男性とはいえ体力的にも限界を感じることもありましたが、辛いなかでも関わる子どもの成長を見れることは本当に嬉しかったですね。

ある小学校1年生くらいの子を担当していたとき、入院した時は注射の時に暴れたり泣いたりして、申し訳ないと思いながらも腕や身体を抑えないといけないこともありました。でもその半年後になると、自分で手を差し出して「今やっていいよ!」と私に自ら教えてくれるんです。疾患や治療に納得理解して、自分で決めて処置を受け入れる姿を横で見ていた時は成長に感動して泣いちゃうこともありましたね(笑)

嬉しいことばかりではなく、悔しい経験もしました。当時担当した、残された人生が短い子どもが「最後は自宅でゆっくりしたい」と退院したのですが、体調が悪くなり、再入院となったことがあります。その後状態が落ち着いて、本当はご家族も本人も自宅に帰りたいのに、家が「怖い場所」になり帰れなくなりました。

結果的にその子は病院で亡くなりました。今となれば、子どもを支えるものが家族以外に地域のサービスなどがあれば「安心して」家に帰れたのではないかと思います。しかし、当時の私は病院の中での事しか知らず「大丈夫だよ、安心だからね」と声をかけてあげることができなかったんです。本当に悔しかったですね。

その後1年くらいは小児のICUなどで勤務していましたが、その経験が頭の中にありながら働いていました。「本当にこの子たちにとって病院でしかできない処置なのかな、病院に最期までいることが幸せなのかな」と思うようになってたんです。

そんなとき、現在の社長であり、大学の同級生でもある岩本から『全ての人に家に帰る選択肢を』という理念の、新しい訪問看護ステーションを作る構想を聞き、声をかけられました。「家に帰りたいのは大人だけではないよね?」と言われて、本当にそうだと思ったんです。

家に帰れるってことを純粋に『良いな』と実感した訪問看護の現場

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訪問中の景色も病院での看護とはまた異なる
実際に転職した当初は、利用者の対象が大人も含まれるため、知識・技術以外に言葉遣いや自宅での立ち振る舞いなど確かに不安は多くありました。でも同時に、やってみなきゃわからないという感覚もありました。

もちろんマナーなどは事前に学ぶこともできますが、人と人なので関わりの中で獲得していくものもあると思います。実際に小児科でも子どもとの関わりから多くの学びを得てきました。また事業所では色んな経験を持った看護師がいて、私の苦手な部分などを知り、そのうえでフォローしてくれるので助かっています。

在宅で小児を看る機会を持つこともでき、同じ小児でも家と病院の違いはかなり感じました。本来は不要なものも手を伸ばせば医療資材に手が届く病院の状況から、そうではない自宅の環境を不安に感じ、責任の大きさを実感しました。

一方で、適切な予測や準備をすれば、ちゃんと小児や家族を支えることができることに気づきました。ICUなどで危機的な状況にいる小児を支えた経験が活き、発熱など変化が起きたときも慌てずにアセスメントし、冷静に対応することができたのだと思います。家族への声掛けなどの配慮も、病院での経験がかなり活きましたね。

なにより、家に帰れるってことを純粋に「良いな」と思いました。病院という特殊な空間でなく、自宅やお家っていうのはどんな状況であれ、その家族が家族らしくいれるんだなって……。病院だと病気や治療が前面にでますが、自宅だとひとりの子どもとして家族に受け入れられ、家族に馴染める。なにより子どもだけでなく、両親の笑顔が病院とは違うんです。

病院以外にも小児科の看護師を必要としてくれる場所はたくさんある

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訪問看護には経験は違えど、同じ志しを持つ仲間がいます
小児科しか経験のなかった半年前の私にいま声をかけるなら、「在宅に興味があるなら、迷わずに来た方が良い」ということ。

私は、病院から在宅にきて地域の方とも関わるなかで、病院以外にも小児科を経験している看護師を必要としてくれるところはたくさんあると知りました。子どもと家族の共有する時間や生活を支える、病気を持ちながらも成長していく過程を支えるということを、在宅という自然な環境で実践することは学びも多いと思います。

ご興味ある方は、是非一度、訪問看護を見学してみてください。

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