弥生会計を愛してくれるみなさまのために――法人向けクラウド会計ソフト普及への挑戦

2016年秋、弥生株式会社が提供する会計ソフト「弥生会計」に、新機能が付加されました。デスクトップ版とクラウド版の製品間でシームレスなデータ共有が可能になり、お客さまにとっての選択肢を広げることができました。今回はこの新機能開発に至った背景と、プロジェクトメンバーの奮闘をお届けいたします。
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クラウド会計ソフト市場の意外な現状とは

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従来のデスクトップ版パッケージソフトから、クラウドサービスへ――時代の大きな流れのなかで、私たち弥生がクラウド会計「弥生オンライン」の提供をはじめたのは2010年1月のことです。

それ以来、おかげさまで大変多くの個人事業主のみなさまにご利用いただいており、2016年にはクラウド会計ソフトの推定市場10万ユーザーのうち、53.1%のシェアを占めるようになりました(※1)。

しかし、これはあくまで個人事業主ユーザーの方に限った結果。法人の場合、クラウド版の会計ソフトを利用すること自体が、まだまだ圧倒的に少数派なのです。推定ユーザー数は、会計ソフト利用者全体のわずか1〜2.5%にすぎません。市場規模も1万ユーザー前後と、普及率が未だ低い状態で推移しているのが現状です(※1)。

その主な原因は、それぞれ課される税金の仕組みの違いにありました。個人事業主が納める所得税は比較的計算しやすく、会計業務も申告書の作成も簡単なものです。でも法人税は計算が難しく、どうしても専門家である会計事務所のサポートが必要になってきます。その会計事務所側で、クラウド会計ソフトの導入がなかなか進まなかったのです。

その主な理由として挙げられたのは、「クラウド版の場合、操作性・動作速度が悪いから」(34.8%)、「事務所で利用している会計ソフトとクラウド版ではデータの連携が行いにくいから」(20.0%)などでした(※2)。

マーケティング部ビジネス戦略チームのマネージャーである広沢義和は、この現状をどう打破していくか、考えをめぐらせていました。

広沢 「どんなに現状の普及率が低くても、今後クラウド化の流れが加速することは間違いありませんでした。そこでまず、クラウド版とデスクトップ版のデータ共有をスムーズにしようと考えたのです。まずはそれがひとつ解消すれば、ソフトの連携しにくさをネックと考えている会計事務所さまにも導入していただけるのではないか、と」

こうして、クラウド会計ソフトを法人市場に普及させるため、新たな機能の開発が2014年からはじまったのです。

※1: MM総研「クラウド会計ソフトの利用状況調査」(2016年3月)
※2:当社調査,「弥生PAPアンケート」(2016年8月)

法人向けクラウド会計ソフト普及のカギを握る、会計事務所の存在

いつでもどこでも入力ができること、そしてリアルタイムで最新データが共有できること。それが、デスクトップ版の会計ソフトでは実現することができなかった、クラウド版製品の大きな価値です。

しかし2014年当時、クラウド版とデスクトップ版、ふたつの会計ソフト間でデータを共有するには、一度片方のソフトからデータを書き出し、それをオンラインストレージで共有しなければなりませんでした。

法人向けクラウド会計ソフトの普及には、法人と会計事務所、双方にとってメリットとなる業務効率化が不可欠。そのためには、クラウド・デスクトップ製品間のシームレスなデータ連携が必要である――そう結論づけた私たちは、チーム一丸となって新機能の開発にあたることにしたのです。

早速、新機能を加えた製品プロトタイプを作ったプロジェクトメンバーは、複数の会計事務所に対するヒアリングを行いました。

広沢 「協力してくださる会計事務所さまに、試作品を操作していただきました。実際に膝を突き合わせながら、とにかくあらゆる意見をお聞きしたんです。何よりも、実際に業務で使うユーザーのみなさんの声に耳を傾けることが第一ですから」

「もっと画面をシンプルに」「これではやりたいことが見つからない」「普段の業務ではこんな堅苦しい言葉は使わない」――全体的なソフトの操作性はもちろんのこと、画面に表示されるアイコンひとつ、ボタンなどで使われている言葉ひとつに至るまで、徹底的にフィードバックをいただきました。

こうして少しずつ、具体的な開発の方向性が見えてきました。しかし、メンバーの苦労はそこからさらに加速することになります。

まるで神経組織を接合するような作業――会計ソフトの新しいフェーズへ

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実はこのデータ共有機能について、当社の開発チームでは、クラウド版の「弥生オンライン」を企画した当初からいずれ必要になることを見据えた設計を行っていました。しかしそれでもなお、この機能を製品に実装するには高いハードルがあったのです。

システム開発部クラウドチームのリーダーである黒木進矢は、山積みの課題と片っ端から格闘することになりました。

黒木 「デスクトップ版がこれまでの技術を活かして作られているのに対し、クラウド版のプログラムは最新のバージョン。そもそも、細部の仕様やデザインが異なりすぎていました。双方の製品をきちんと連携させるには、まるで一つひとつ神経組織をつなぎ合わせるような作業が必要だったんです」

しかし黒木ら開発メンバーには、デスクトップ版で使われている以前の仕様に、クラウド版を合わせる気はありませんでした。

黒木 「今回の新機能の開発は、法人が使う会計ソフトそのものを新しいフェーズへシフトさせていくための第一歩だと考えていました。だからこそ、デスクトップ版をバージョンアップさせる方針で開発に取り組もう、と」

さらにプロジェクトメンバーは、機能だけではなくUI(ユーザーインターフェース)にも徹底的にこだわりました。それは会計事務所で使っていただく際、複数の顧問先企業を簡単かつ直感的に管理できるようにするための配慮でもありました。

最終的に製品を完成させるために、開発チーム、マーケティングの担当者、そして普段お客さまと接しているカスタマーセンターのメンバーまで巻き込んで、喧々諤々と議論が続けられました。

「弥生会計」を愛してくれるお客さまのため、あきらめずに開発を続けていく

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こうしてフィードバックとブラッシュアップを何度も何度も繰り返し、2016年秋、ついに念願の「デスクトップ版とクラウド版でのシームレスなデータ共有」が可能な製品、「弥生会計 17 AE」が完成しました。これまで双方の連携を阻んでいた壁が取り払われたのです。

とはいえ、製品に新たな機能を追加しただけでは不十分。実際にソフトを使用する法人や会計事務所の方々にその価値をご理解いただけなければ、クラウド会計ソフトを法人市場へ広げていくことはできません。

そこで私たちは、今まで以上に会計事務所のみなさまとの関係をより強固なものとするため、営業の体制を強化することにしました。さらにカスタマーセンターでも、会計事務所の方に気軽にご相談いただけるよう、専用の窓口を設置しています。

黒木 「会計事務所の中には、デスクトップ版の『弥生会計』を長きにわたって愛してくださっているお客さまも多いんです。そんなみなさまに対して私たちができることは、クラウド版でもご利用いただくに足る製品を提供し続けることだと思っています。もちろん、デスクトップ版のバージョンアップもあきらめません」

広沢 「会計ソフトのクラウド化は、単なるトレンドではなく時代の“流れ”。今後もその流れは止まることはないでしょう。だからこそ、クラウド会計ソフトがもたらす付加価値や可能性を、法人・会計事務所の方々にもっとお伝えしていきたいですね」

会計ソフトのクラウド化によって、法人・会計事務所のみなさまにさらなる成果をもたらせるように――私たち弥生はこれからも、全社一丸となって価値ある製品の開発に注力し続けます。

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