未知と責任があるからこそ面白い――新規事業を育てる プロジェクトマネージャーの流儀

弥生にとって、クラウドへの挑戦は一筋縄ではいかないものでした。築き上げた実績と、中途半端なものをリリースするわけにはいかないというプライド。そんなプロジェクトの責任を一手に背負い、見事に軌道に乗せた立役者、橋本武志が実践してきた「プロジェクトマネージャー」の在り方に迫ります。
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未知の領域への好奇心

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▲イスラエル旧市街を訪れた際の橋本

社会人になってから、海外旅行が趣味になりました。「文化圏がまったく違う、未知の領域に触れること」を求めて、毎年2~3カ国ほど巡っており、今まで36の国に行きました。

一般的な観光地は大体行き尽くしてしまって、最近はコアな遺跡とか、現地の人でもなかなか足を踏み入れないようなスラム街などを訪ねるようになりました。社長に行き先を告げる度に「そんなクレイジージャーニーみたいなマネ、もうそろそろやめてくれよ……」と止められます(笑)。

一般的に観光客が行かないような場所への旅は、事前に調べられる情報も限られているので、現地での判断力が何より重要です。

空港から目的地までどうやって移動するか、ご飯はいつどこで食べるか、そもそも泊まれる場所はあるのか、信頼できる情報はどれか、現地で案内人を雇ったほうがいいかもしれない――未知なる環境だからこそ、一つひとつの決断に重みが出てきます。どこに行くのも、何をするのも、すべてが自分次第です。

そんな風に自分で責任を持って全体を管理し、前に進んでいくことが好きなんだと思います。誰かに決められたコースをなぞるだけではつまらない。リスクを理解したうえで、自らの意志で道を切り開き、その先で想像を超えるような成果に出会う。

ひりつくようなプレッシャーを乗り越えていくからこそ、「ほかの誰でもなく、自分が生み出した成果だ」と実感できるんです。

こうして自分にとっての旅のスタンスを考えてみると、私がいま会社で担っている「プロジェクトマネージャー」という役割は、あらためて自分の性に合っているんだと思えてきますね。

目的の共有と議論を重ね、自己組織化されたチームを目指して

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▲未知の環境に触れられることが旅の醍醐味

2011年に弥生に転職してから2018年のいまに至るまで、私はこの会社でプロジェクトマネージャーを務めています。会社としては「初めてのクラウドサービス開発の真っ只中で生みの苦しみ」を味わっているというタイミングで入って、以来一貫してクラウド開発のプロジェクトに携わってきました。

新しいサービスをゼロから立ち上げる過程は、未知との出会いを求める旅路に似ています。絶対的な正解がないなかで、慎重かつ迅速に状況を捉え、進む方向を自分たちが決めていかなければならない。だからこそ、やりがいや得られる達成感も大きいんです。

旅のスタンスとプロジェクトマネージャーの役割が性に合っている、と言いましたが、まったく同じように考えているわけではないです。プロジェクトマネジメントと気ままな一人旅で異なるのは、前者は「チームで動く、人を動かす」という要素が強い点だと感じています。そこに、この仕事の醍醐味があるとも感じています。

プロジェクトマネジメントをするうえで、私が大事にしているのは「常に目的(達成したい願望)を意識させること」です。

「このプロジェクトは何のためにあって、自分たちにとってのゴールはどこなのか」「お客様にはどんな価値を提供できるのか」「悪い意味での忖度をしていないか」ということを、何度も議論を繰り返しながら確認し合います。

具体的には、いつどこで誰に「このプロジェクトは何をしているのですか?」「どこに向かっているの?」などと聞かれたとしても、チーム内のメンバー全員が同じ答えを言えるくらい、精度が高められるといいですね。当たり前ですが、プロジェクトの肝となる不確実性の排除、前提条件、制約条件を合わせることは徹底します。

プロジェクトの目的を把握できていないと、どうしても仕事に「やらされ感」が出てきてしまいます。なぜなら、プロジェクト全体のなかでの自分の役割、いま取り組んでいる業務の意味を、見失ってしまうから。一方で、目的を共有できて入れば「ここを目指すなら、こうしたほうがいいかもしれない」「新しくこんなことをやりたい」といった主体性が生まれてきます。

チームが進む方向性を整えつつ、メンバーそれぞれの「やりたい」を引き出して、それを後押しすることが、プロジェクトマネージャーの腕の見せどころです。

「必要だから、誰かがやらなきゃいけないから」といって、仕事を一方的に押し付けては誰も幸せにならないし、会社として望む成果も得られません。プロジェクトマネージャーには裁量とそれに比例した責任があります。そのなかで、成果につながるのであれば、メンバー自身のやりたいことをやってもらうことを大切にしています。

だからこそ、コミュニケーションは丁寧に。「やりたい」と「やるべき」を自覚させて、能動的に課題解決に挑めるようリードしていきます。メンバーの意見をしっかり受け止めながら、相互理解のための議論の時間は惜しみません。こうしたプロセスを大切にすることで、一人ひとりが当事者意識を持って、自らの判断でPDCAを回していける「自己組織化されたチーム」を目指していきます。

クラウド開発のプロジェクトにおいては、この自己組織化を上手く促進できたおかげで、頼りがいのある強いチームづくりができたなと感じています。

さまざまな立場の狭間、そこから導き出せる最適解

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▲最適な「YES」を模索しながらプロジェクトを進めていく

これまで携わってきた弥生での新規事業――クラウドサービスの開発プロジェクトマネジメントは、とても取り組みがいのある仕事でした。

弥生は以前より、デスクトップの会計ソフトでは大きなシェアを誇っています。それゆえに、「わざわざクラウド会計ソフトの開発にまで乗り出す必要があるのか?」と懐疑的な社員も少なからずいました。

現状が安定しているからこそ生まれる、新しい事業開拓への抵抗感、失敗の許されないような雰囲気――。こういった障壁は、企業が何か大きな挑戦に向き合ううえで、必ず現れるものでしょう。

社内の関係性を把握して調整しつつ、事業が前進しやすいような環境を整えていくことも、プロジェクトマネージャーとして重要な役割になってきます。チーム内だけでなく、チームの外の仲間とのコミュニケーションにも気を配らなければなりません。

会社で働く社員は、それぞれ開発や品質管理、経理、営業といった異なる立場を背負っています。

「お客様の役に立つサービスをつくり、提供することにより、業務を支援する」という大きな目標は共有できていても、「多少遅れても品質を追求するべきだ」と考える人もいれば、「納期は厳守、コストカットを最優先に」と考える人もいる。細かな主義主張は、人それぞれです。

プロジェクトを統括する立場にいると、上司部下問わず、さまざまな部署からいろいろな要望の声が聞こえてきます。もう少し俯瞰すれば、社外にだって関係者はいます。プロジェクトマネージャーと言えば響きはいいかもしれませんが、要は中間管理職です(笑)。

ステークホルダーとは良好な人間関係を構築することが重要ですし、苦労もします。

けれども、それは嘆くべきことではありません。さまざまな立場の人たちの声を拾いやすいポジションにいる。判断の情報量が多いからこそ、要望を最大限に叶えられる落とし所を見つけることができる。

時には「NO」とはっきり言わなければいけない場面もありますが、最適な「YES」を模索し、積み重ねていくことで、周囲をどんどんやる気にさせて、巻きこんでいくことができるのです。

当初は懐疑的だったクラウド会計ソフトの開発プロジェクトも、そんな風に根気強くコミュニケーションを取りながら、ひとつずつ目に見える変化、成果を生み出していくことで、社内での信頼を勝ち取ってきました。

今は全社がデスクトップアプリ、クラウドアプリのそれぞれの特性や必要性を理解している環境になったので、その点においては成果が出たと思います。

責任重大、だからこそ得られる達成感

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▲今後はプロジェクトマネージャーの育成に力を入れていく

これからも、私はこの会社でプロジェクトマネジメントを続けていきたいと思っています。弥生は、責任さえ持てば個々の「やりたい」という思いを尊重してくれる企業文化があるので、居心地の良さを感じています。

今後、個人的に注力していきたいことは、プロジェクトマネージャーの育成です。クラウドサービスが軌道に乗ってきてからというもの、弥生では次なる新規事業の種が続々と芽生えはじめてきました。それらを自立するまで、しっかりと育てていける人を、これから社内で増やしていけたらと考えています。

プロジェクトマネージャーは多くの人とお金を動かし、それらがもたらす結果のすべてに責任を持つという、責任重大な役目です。自分の決断ひとつで、作業の工数が増減したり、売上げが大きく変化したりします。やりたくもないのに任されると、このうえなくつらいポジションかもしれません(笑)。

ただ、それを踏まえてなお「やりたい」と思える人間にとっては、本当に魅力的な仕事です。責任を持つ分、裁量がある。自分の裁量が、ダイレクトに数字に現れて返ってくる。成果物をリリースしてお客様が喜んでいるのを見た時、それが売上げに結びついている事実を知った時、何よりも嬉しいですね。

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