つくり手の想いと世界観を届けるために――。ある男が潔さと根気で紡いだ軌跡

日本ヴォーグ社は、ハンドメイドをテーマにした本の出版から、通信販売や通信講座の運営まで行なっている出版社です。2017年、インターネットで新規ユーザーを開拓したいという思いから、YUIDEAのWillyetを採用し、「てのこと」をリリースしました。そこに至るまでには、試行錯誤の日々があったのです。
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手はじめにやったのは、本という情報パッケージを分解したこと

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▲日本ヴォーグ社 事業本部 てのこと企画室 プロデューサー 足立浩さん(左)と小栗千尋さん(右)

日本ヴォーグ社で、さまざまな企画をプロデュースしてきた足立さんがインターネット担当になったのは、2007年のこと。インターネットに詳しかったからというわけではなく、プロデュース力とフロンティア精神を買われての抜てきでした。

すでにECサイトは開設していましたが、残念ながら順調とは言い難く、テコ入れが必要な状況でした。当時、別部署に所属していた足立さんも、「これはまずいんじゃないかな」と思いながら様子を見ていたそうです。

足立 「以前私が担当していたカルチャー事業は、独自性が評価され人気が出ていたんです。ところが、当時の当社のECサイトはどこにでも売っているものを並べているように見え、いわば総合百貨店。差別化が図れていないと感じました」

足立さんがインターネット担当になった時点では、そのサイトでは“商品を売る”のをやめ、広報に徹することになっていました。広報だとしても、そもそも集客が足りないと判断した足立さんは、まずは集客し、それから売ることをはじめようと考えたのです。

そして集客においてポイントにしたのが、日本ヴォーグ社の代名詞である「ニット」。ニットのファンは何が見たいだろうと思考を巡らせました。

足立さんは、まず、手芸の三大要素を、デザイン・技術・素材と定義しました。そもそもこれをひとつの情報パッケージにしたのが日本ヴォーグ社の出版物。この中にタダで見せていいコンテンツがあるはず。そう考えた足立さんは、まず、自社で出版している本に掲載しているニットのデザインの写真をサイトに掲載。さらに、ニットのレシピ(つくり方)のマイページストック式ダウンロードをスタートさせました。

このふたつの取り組みに、編集者たちは「本の要素を分解するなんて」と大反対。ですが、ニットのデザインを見せることでそれが掲載されている本の価値も伝わるはず、そして何よりこれからの時代を考えると必要だと押し切りました。

結果、特にフリーのものを含めた単品売りはサイトのキラーコンテンツになり、集客に成功。

これに手応えを感じた足立さんは、次に基本的な編み方などを動画で紹介しました。いまでこそ、YouTubeなどでよく見るコンテンツですが、2008年当時はまだ珍しく、これまた大反響。こうして、インターネット上にも日本ヴォーグ社のファンが増えていきました。

好評だった冊子『てのこと』を潔く3号で廃刊

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▲好評だった冊子「てのこと」。この世界観をサイトで表現することに。

日本ヴォーグ社には、各ハンドメイドのスキルを身につけた方々が所属している会員制事業があり、その会員の方向けにハンドメイドの材料を販売しています。

そして、会員制事業の新しいジャンルについては、その楽しさや魅力をまだ知らない方々に知ってもらう必要がありました。

ハンドメイド好きな人たちは、自分が好きなジャンルを突き詰めはするけれど、他ジャンルへの移行など横の広がりがあまりない……。せっかくハンドメイドの楽しさを知ったのなら、もっと幅広く楽しんでほしい。

そう思った足立さんは、2016年3月、さまざまなジャンルのハンドメイドを紹介する冊子『てのこと』を創刊し、会員が購入した教材に同梱して配ることにしました。

足立 「クオリティが高い!と、社内外から評判だったんです。次が楽しみだって。ただ、他の業務もある中で、取材から執筆、写真の選定などすべて私ひとりでやっていたので、半年に1冊程度のスピードが限界。冊子としては、あぁ、こんなジャンルもあるのねって思ってもらえることには成功しました」

が、一方でこんな声も。

「足立さん、これはすごくいい。だけどね、私たちだけにじゃなくて、外に向けて出したほうがいいわよ。もったいない」

インストラクターの方からの言葉でした。「確かにそうだな」と思った足立さん。なんと、冊子『てのこと』をたった3号で切り上げ、次の手を打つことにしたのです。

足立 「この世界観は間違っていないという確信がありました。ただ、やり方が違った。ちょうどその頃、代表の瀬戸からこの切り口でインターネットを使って作品を売りたいんだよって言われたんです。ですから、その路線で考えてみることにしました」

少しの間、インターネットから離れていた足立さん。サイト「てのこと」を立ち上げることになり、再びインターネットの世界に戻ってくることになりました。

クオリティの高いハンドメイド作品をセレクトショップとして売る

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▲サイト「てのこと」

「minne(ミンネ)」を筆頭に、誰もが気軽にハンドメイド作品を売り、そして買うことができるようになった昨今。手づくりの温もりを求めている人が多くなっています。

そんななか日本ヴォーグ社は、ハンドメイドのレシピこそ売っていましたが、完成品を売ったことはありませんでした。同時に、個人でハンドメイド作品を売ることに限界を感じている人たちの声も耳にしていました。

だったら、自分たちが代わりに売り、セレクトショップ的な役割を果たせばいいのではないだろうか。それを、サイトを立ち上げて実現すればいいのではないだろうか。そうすれば、結果的に新規ファンを獲得できるはず――。

いままで日本ヴォーグ社の本やサイトを見てくれていた人たちは、ハンドメイドを“する人たち”でした。そこに今度は、完成品を売ることにより、ハンドメイドを“しない人たち”を新たなファンとして獲得しようと考えたのです。

そう考えていたとき、タイミングよく「新しくサイトをつくるなら」と、部長から私たちYUIDEAのコンテンツマーケティング・プラットフォーム「Willyet」を紹介されたそうです。

足立 「まず最初に思ったのは、見栄えのいいブログだなということ。CMSで簡単にできるならありがたいし、ビジュアル優先なので、ひとつの世界観を届けるのに適している。『てのこと』がやりたいことにピッタリだと思いました」

こうして、日本ヴォーグ社に即決でWillyetを採用いただくことになります。私たちYUIDEAはまず、「Facebookで新規ユーザーを獲得しましょう」と提案しました。

サイト「てのこと」のコンテンツを、Facebookに紹介文付きで投稿することにより、潜在的な顧客に訴えることにしたのです。Facebookから興味を持った方々にコンテンツを見てもらえれば、きっとファンになってもらえると考えました。

結果、これまで獲得できていなかった顧客層の獲得に成功。日本ヴォーグ社の既存ファンの多くが60代以上なのに対し、現在「てのこと」を見てくれているのは、30〜40代の女性がメイン。しかも完成品を買ってくれる人たちなのです。

作品を売るのではなく、作品が持つストーリーを売ることが使命

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▲「てのこと」で作品のストーリーに共感してほしいと語る足立さん(右)。実は小栗さん(左)は「てのこと」立ち上げ後、サイトの世界観に感銘を受け自分も携わりたい!と異動してきました。

一方で、これからクリアしなければいけない課題もあります。

実はサイト「てのこと」自体では、商品の販売はしていません。一人ひとりの作家がその商品に込めた思いや作品づくりの背景を紹介しているのみで、実際の購入は既存のECサイト「手づくりタウン」に誘導しています。

ここに落とし穴があったのです。

もう何年もリニューアルしておらず、スマホ対応が不完全だった「手づくりタウン」。サイトの仕組み自体が古く、新規登録への導線がわかりづらかったのです。

足立 「新規のお客様が欲しいのに、彼女たちに対するホスピタリティがなかったんです。結果、購入する前に離脱してしまう方が続出していました。私が過去にこのECサイトを担当していたからこそ見落としていたんですね。
いまやインターネットを見ているユーザーの6割がスマートフォンを使用していることも把握していたのに、その検証を怠ったのはほかの誰でもない自分。本当に恥ずかしいと思ったし、一番責任が大きいと感じました」

もちろん、このままにするつもりはありません。2018年7月、この問題を解決するため、新たにECサイト「てのことショップ」を開設しました。

足立 「今後は、サイト『てのこと』を見てくれているお客様が、各作家の世界観に共鳴できるような場に育てていきたい。当社にとっての財産は、各ハンドメイドの作家たちとのつながりです。作家たちの世界観が伝わるようなコンテンツをつくり、作品を売っていくことが、いまの私たちの使命だと思っています」

モノを売り場に並べることは簡単です。しかし、モノだけを並べれば、モノとモノとの競争になってしまいます。そうではなく、一つひとつに比べようのない個性や世界観があるハンドメイド作品を、それぞれが持つストーリーと一緒に売りたい。

そんな思いを胸に、足立さんはサイト「てのこと」のコンテンツを、一つひとつ丁寧につくりあげています。私たちYUIDEAは、そのコンテンツが効果的にお客様の元へ届くよう、データ分析やSNS運営などでお手伝いを続けています。

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