家族・親子のコミュニケーションをユカイにするロボット「BOCCO」の誕生秘話

“ロボティクスで世の中をユカイにする”ユカイ工学が開発した、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」は、2015年度グッドデザイン賞を受賞。子どもが安心できる可愛らしいフォルムだけでなく、新たなコミュニケーションをもデザインするBOCCO。その誕生秘話と、ユカイ工学が目指すロボットのいる未来についてお話しします。
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ロボットにしかできない、親と子をつなぐコミュニケーション

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スマートフォンを持たない子どもたちと、離れていてもコミュニケーションを取ることができたらーー。そんなお父さんやお母さんの望みを叶えられるのは、ロボットなのかもしれません。

どうしてもロボットを創りたい。

そんな想いで立ち上がったユカイ工学株式会社は、次世代のユーザーインターフェースを担うのは「コミュニケーションロボット」だと考えます。

ロボットが人間の行動をサポートする未来に向けて創られた、ユカイ工学の量産化ロボット第一号は「ココナッチ」。美しい曲線で丸みを帯びたキュートなデザインで、USBでPCとつなげば、TwitterやFacebookへの新着通知をブルブルと震えて知らせてくれます。その他、脳波で動くネコミミ、チームラボとのコラボ製品など、多くのプロダクトを生み出してきました。

そして今回、「家族」や「親子」にフォーカスしたロボットを創ったきっかけは、代表 青木俊介のふとした違和感でした。

青木 「SNSで同年代がラーメンを食べてる写真よりも、自分の子どもがお昼ごはんに何を食べたのかの方が知りたいんだよなって思ったんです」
大人同士なら、LINEなどを使えばスムーズに日常を伝え合うことができます。スマホを持たない子どもとのコミュニケーションにこそ、ロボットはぴったりだったのです。

BOCCOは、コミュニケーション機能だけでなく見守り機能も持ちます。ロボット本体にセンサーがひとつ付属。動きを感知してスマホアプリに通知します。たとえば、センサーを玄関に取り付ければ、買い物中のお母さんも、仕事中のお父さんも、子どもの帰宅をアプリで知ることができるのです。

また、BOCCOからもアプリからも、音声などを送ることができるので、家にいることなくコミュニケーションを取ることができます。

青木 「小学生のうちの子が『今日アンパンマン見たよ』とか、どうでもいいことを報告してくれるんですよね。それが嬉しいんです」

家にいてくれる安心感とユカイ工学の遊び心がマッチしたデザイン

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子どもが安心して使いたくなるデザインができあがるまでに要した期間は約2か月。当初、BOCCOのデザインに試行錯誤していた青木は、子どもが使うならロボットらしいものがよいとデザイナー巽孝介にデザインを依頼しました。

巽は以前、人とロボットの関わりをテーマにした研究室(豊橋技科大・岡田美智男教授)に所属していました。岡田先生の著書「弱いロボット」に出てくるロボットデザインを数多く手がけています。開発までの短期間で、彼が作ったプロトタイプは計7体にも及びました。

青木 「ユカイ工学で創るロボットのデザインイメージは『妖怪』をテーマにしているんです。BOCCOのテーマは座敷わらし。家にいるとハッピーになるでしょ」
けん玉や赤べこの要素など遊び心もプラスしながら、ロボットらしいフォルムが完成。BOCCOの頭にはけん玉のような角があり、首は赤べこのようにぷるぷると揺れます。斬新なテーマを掲げながらも、家において違和感がないデザインを追求しました。

青木 「以前、家でいかにもロボットらしいロボットを組み立てたら、奥さんに『さっさと片付けてね』って言われまして。家具みたいに自然と家に馴染むものにすればいいんじゃないかと思いました」
家具らしさは、センサーにも活きています。

巽 「機械的なセンサーは家には馴染まないので、積み木の形にしたんです。センサーって増やしていくものなので、1つずつ組み合わせて何かを作り上げる積み木のイメージがマッチするなと」
プロトタイプ開発に携わったのは、エンジニア伊藤伸朗です。青木がパワポで書いた簡単な回路図を元に、数週間で作り上げました。とくにこだわったのは、首の動き。愛着のわく首の動きを、自身が飼う愛猫を研究しながら追求しました。グッドデザイン賞の審査員の方にも、その動きを高く評価していただきました。

家族でも一人暮らしでも。国内でも海外でも。BOCCOがいる暮らし

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ユカイ工学のメンバー自らBOCCOと暮らしてみたことで、製作を始めたころに予想してた以上に、気づきや発見がありました。

青木 「子どもがママとふたりでいるときの、普通なら知ることができないやり取りを垣間見ることもできるんですよね。それが実際に会ったときの話題につながったりして」
会っているときのコミュニケーションも豊かにするBOCCOは、子どものいない家庭でも活躍します。新婚の鷲坂は、自分の帰宅をBOCCOの動きで気づいて、いち早く「おかえり」と言ってくれる奥さんがいる日常に喜びを感じています。さらに、BOCCOは、時差や国境をも乗り越えて温かいコミュニケーションを与えています。

鷲坂 「友だちの奥さんが海外赴任していて。日本の旦那さんの家にBOCCOをおいているんですけど、奥さんが海の向こうで帰宅したのがわかるんですよ。そしたらBOCCOで『おかえり』って言ってあげるらしいです」
今後は、一人暮らしでもBOCCOとの時間を楽しむことができるようになります。BOCCOはアップデート可能なので、スマートハウスやスマート家電との連携だけでなく、一人暮らしの巽を筆頭にTwitterなどとつなげられる「ぼっち機能」の追加を検討中です。

また、BOCCOはペットと暮らす人にも安らぎを与えてくれます。

伊藤 「猫が寝ているクッションの下にセンサーを仕込んでます。今、起きたんだなと動きを感じられるとペットでも楽しいですよ。監視カメラとかつけちゃうとずっと見ちゃうじゃないですか。時々ピロンと通知がくるくらいでちょうどいいんですよね」
BOCCOがいると、なぜか家族が楽しくなる。一人暮らしやペットとの暮らしも充実する。そんな家が増えることを、ユカイ工学は願っています。

ロボットの役割は、作業ではなくコミュニケーション

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青木 「一緒にいても、それぞれスマホで別の画面を見てる。それって寂しいじゃないですか。ロボットは、誰かといる空間をもっと楽しくできると考えています」
近年、スマートハウスへの注目が高まっていますが、ボタンだらけのパネルがいくつも並ぶ家は、本当にスマートでしょうか。

青木 「パネルだらけの壁がむき出しになってるより、インターフェースとしてロボットがひとつある方がスマートだし、便利じゃないですか」
スマートさを突きつめるには、ビジネスとしてロボットを創り続けられるかどうかという視点も欠かせません。多くの人が「ロボット」と聞いて想像するのは、二足歩行でガチャガチャと動く、多機能なものではないでしょうか。

動きを増やし、なめらかに動かそうとするほど、エネルギーを消耗しやすくコストもかかります。そんなロボットばかりを生産しては、会社として存続できなくなってしまう企業が後を絶ちません。

鷲坂 「ラジコンのようにコントロールできることより、しっかり役割を持たせてあげて売れること、ビジネスを続けられることも大事です」
ロボットがサポートすべきことは、実は、食器を洗う、洗濯物をたたむというような作業的なことではありません。人と一緒に生活して、人のコミュニケーションを深めることこそ、ロボットの役目だとユカイ工学は考えます。

デジタルの普及で便利になった分、一度希薄になってしまった身近な人とのコミュニケーション。それをデジタルで動くロボットがまた取り戻し、深めてくれる。そんな未来を、ユカイ工学はBOCCOとともに目指していきたいのです。

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