「育児休暇は女性のもの」そんな常識、誰が決めたの? ーーとある男性社員の育休奮闘物語

近年、男性の育児休暇を推奨する企業が増えつつあります。しかし、厚生労働省によると、男性の育児休暇取得率は2.65%(2015年)にとどまっています。そんななか、ゾーホージャパンの社員・松本暁義は、男性社員としてはじめて育児休暇を取得。まさか仕事観が変わるなんてーーそう話す彼の育休生活に密着します。
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「育児休暇=女性が取るもの?」若手マネージャーが常識を覆す

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▲ゾーホージャパンの男性社員として、はじめて育児休暇を取得した松本とその子ども
“イクメン”。この言葉に代表される通り、近年、男性の育児への参加を促す取り組みや制度が整備されてきています。

ゾーホージャパンも、「イクメン推進企業」として、女性だけでなく男性の育児休暇の取得をサポートしています。ところが、まだまだ育児休暇は「女性だけのもの」というイメージが根強いのも事実。なかなか取得に踏み切る男性社員が現れませんでした。

そのようななか、前例のないことに挑戦する“ファーストペンギン”として、ひとりの男性社員が手を挙げます。それが、2012年当時、Zoho事業部と経営企画室のマネージャーを兼務していた、松本暁義です。

松本が育児休暇を取得しようと考えた理由は、当時担っていた“役職”にありました。

松本 「経営企画室は、当社の企業理念の浸透や実践などに積極的に取り組むことをミッションとする組織です。『主体的であり、ともに価値を創造する人財が集う会社』という人事理念の基礎を形作ったのも経営企画室でした。

また、その『主体的』に関連して、当社では前例のないことに最初に挑戦する社員を『ファーストペンギン』と呼び、すべての社員が何らかのファーストペンギンになってほしいという思いがあります。だからこそ、経営企画室のマネージャーとして、先陣を切って育児休暇を取ってみようと考えたんです」

しかし松本には、「マネージャーなのに育児のために業務から抜けてもいいのだろうか」。そんな葛藤もありました。

その背中を押したのは、ソフトウェアの開発や販売を行う企業の社長が書いた、1本の記事。記事には、仕事も会社も大好きな社長が自ら会社を2週間休んで育児休暇を取った話が書かれていたのです。

企業のなかで最も忙しいであろう“社長”が育児休暇を取得しているのか。“役職”は関係ない。自分も取得してみようーー。

そう感じた松本は、育児休暇取得に踏み切ります。

社員に長く働いてもらいたいーー充実のサポートは社長の試行錯誤から生まれた

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▲松本(写真左)と代表取締役の迫(写真右)
育児休暇の取得を決めた松本は、代表取締役の迫洋一郎の元に向かいます。すると、松本から話を聞いた迫は大賛成。話はスムーズに進みます。

迫 「松本はとても優秀で、育児休暇を取った2012年当時は、31歳と若いながら、マネージャーという難しい職制を与えられていました。上司にも堂々と意見を言えることや、視野の広さで社員を引っ張っている姿を高く評価してのことです。

そんな松本が、社会的に見ても前例がほとんどない男性の育児休暇を取得することは、会社にとって、また社員にとって良い刺激になると感じました」

良い社員には、長く働いてもらいたいーー。そんな迫の思いのもと、当社では、「社員が働きやすい仕組みづくり」に力を注いできました。

離職率が上がる要因として挙げられるのは、「育児」と「介護」。さまざまなデータで出ているうえ、当社にもその壁にぶつかる社員がいます。

そのような状況を打開しようと、迫は、実際に育児によって会社を辞めざるを得ない状況にあった社員に話を聞きました。どうしたら育児をしながらでも仕事を続けられるのかを追求し、一人ひとりの課題に寄り添ってきたのです。

こうして整備されたのが、社員の多様な働き方をサポートする制度です。

育児をする社員には、男女問わず取得できる育児休暇だけではなく、子どもが小学校に上がるまでは、育児短時間勤務制度(1日の所定労働時間を午前8時から午後6時の間の4時間以上とする制度)等を設けています。

そのほかにも、ジョブリターン(勤続3年以上の社員が育児や介護を理由として退職した場合、退職後5年以内であれば再雇用が可能)なども取り入れています。

それらの制度は、迫が2011年に代表取締役社長に就任してから、独自の改定を重ねています。いずれも、「どうすれば社員が働きやすいか」を念頭に磨きをかけてきたものです。

また、制度や代表である迫からの後押しだけではなく、松本の上司や事業部のチームメンバー、さらにはチーム以外の社員も松本を後押ししました。

こうしたバックアップ体制のもと、松本は1ヶ月間の育休生活に入っていきました。

育児って想像以上に大変……。“休暇”のはずが、通常勤務よりもヘトヘトに

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▲子どもと添い寝をする松本
育児休暇に入る前、松本は「きっと時間ができるだろうから、資格の勉強でもしようか」と考えていました。しかし実際にはそんな余裕はなく、むしろ家事と育児で通常の勤務より忙しく感じられたといいます。

松本が育児休暇を取っていた期間は、子どもが段階的に保育園に慣れるように短時間の保育からはじめる「慣らし保育」の期間。朝、保育園に連れて行っても、1時間から数時間ほどで家に帰ってきてしまいます。その数時間のあいだに、子どもが散らかした部屋を片付け、洗い物や掃除、洗濯をしていると、あっという間にお迎えの時間です。

さらに松本は、リモートワークで行っていた、会社のメール対応にも追われることになります。「1ヶ月間だから、そんなに業務を引き継がなくても、なんとかなるだろう」と、甘く見ていたのです。そのため、家事と育児に加え、メールの対応と、大層忙しい1ヶ月間を過ごす羽目に……。

松本 「育児休暇を取るならば、たとえ短期間でも仕事の整理や引き継ぎをしっかりして、リモートワークでの仕事は最低限にした方が良いと思いましたね(笑)」

しかし、リモートワークができる環境があったからこそ、後ろ髪を引かれずに育児休暇の取得に踏み切れたのも事実。クラウド上で仕事ができる環境があり、社内の情報も得られることから、安心感があったといいます。

そして、肝心の子どもとの関係はーー?

松本 「これまでは、どうしたって子どもにとっての“お母さん”には勝てないんだろうなと感じていました。しかし、保育園に子どもを迎えにいくと、自分にすがって来てくれて。その姿を見たら、父親としての自信につながりましたね」

育児休暇を取るまで、子どもとふたりで過ごしたことがなかった松本。当初は、育児って何をしたらいいのだろう?という不安がありました。しかし、やってみたら案外できるもの。さらには、育児への考え方にも変化が訪れました。

松本 「実際に自分が育児をして当事者意識を感じるようになったことで、今まで自分が育児を『手伝う』という意識でやっていたんだと気づかされたんです。子どもに何を食べさせるか、何を着せるか……あらゆることをすべて妻が考え、自分は言われたことをやっていただけだったんだなと。

妻だけが育児を背負うのではなく、ふたりでフォローし合い、2本の柱となって育児に取り組んでいきたいなと、意識が変わりました」

育児休暇のすゝめーー育児休暇に入らば大いに育児すべし  

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▲勤務中の松本
1ヶ月間の育児休暇を終え、職場復帰をした松本は、仕事への考え方が変わったことに気づきます。

まずは、「さまざまな事情を抱えている人の状況を、イメージできるようになったこと」。
「ワークライフマネジメント」という言葉がありますが、育児をすると、仕事だけではなく、家庭も含めた形での優先順位付けが大切になります。

以前は仕事のことだけを考え、家のことはそこまで重要視していなかった松本ですが、自分が育児と向き合う経験をしたからこそ育児や介護などの事情を抱えたチームメンバーの状況に共感でき、彼らに合わせたマネジメントを行えるようになりました。

次に、「優先順位が明確になったこと」。
これは、育児に取り組むことで、改めて自分は人生で何を大切にして生きていくのか、価値観や仕事観を思い直したことから感じました。

たとえば、仕事のアポイントメントや、やるべきことがあるときに、子どもが発熱したらどうするのか。妻に対応してもらうこともできるけれど、お互いが仕事を抱えるなかで、どう判断するのがベストなのか。考える機会が増えることで、判断が明確になっていくとともに、仕事のなかでの優先順位もクリアになります。

最後に、「興味の幅が広がったこと」。
自らが当事者になることで「育児」や「働き方」というキーワードに興味を持つようになり、情報感度が高まったといいます。

ワークスタイルについての話題がニュースなどで多く取り上げられるなか、当事者としての感度を高く持つことで、仕事や事業にも役立つのではないかーー。そんな期待が高まります。

しかし、男性の育児休暇を浸透させるには、乗り越えなければいけない壁があるのです。

松本 「女性は出産前後に身体的に休暇が必要ですし、法律でも休暇の必要性が規定されています。でも男性にはそういった明確なタイミングや絶対にとるべきといった規定がない。だからこそ、育児休暇を取るんだという“決断”が必要になります。

しかし、育児休暇を経て、多くのことを学ぶことができました。人生を俯瞰したときに、絶対に良い変化が期待できる。ぜひ男性社員にも育児休暇を取ってほしいですね」

ファーストペンギンとして前例を作ることによって、「育児休暇を取りたい」と思う社員の決断を後押しすることができたらーー。そんな願いが松本にはあります。

松本のストーリーは、良い社員が長くこの会社にいられるように、社員自身の生活のなかにある、仕事を続けるための“壁”に一緒に立ち向かったひとつの事例です。ゾーホージャパンは、社員の「非常識への挑戦」を尊重し、社員に寄り添った制度や環境を作り出していきます。

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