動物医療業界に情報技術でイノベーションを! 社会課題に向き合う経営者の思い

今やペットの数が15歳未満の子どもの人口を大幅に上回り、小動物は「飼う」から「家族、パートナー」という存在に。その現代において、全国の動物病院に向けて有益な情報を提供するWebサービス「Vetpeer(ベットピア)」を展開する株式会社Zpeer(ズピア)は、獣医師の先生方と、動物病院に物を販売するメーカーの双方のニーズに対応する形で産まれました。
  • eight

それぞれの思いをもって集まった創業メンバー

70627a8bc6ee271522304dec163d855bea7aa0a9
Zpeerの事業構想を考えたのはひとりのコンサルタントでした。動物医療業界と人医療業界の両方にコンサルタントとして関わっていた藤本(現COO)は、ふたつの業界の間の大きな差に気が付きます。

人の製薬業界は10兆円という巨大市場で、何万人もの営業員(MR)が薬の情報提供に携わり、新しい医療情報はMRによって医師に即座に届けられます。一方で、動物用医薬品業界における営業員の数は数百名。全国の獣医師の先生方一人ひとりに十分に情報を届けられる環境ではありませんでした。

また、人の医療ではメーカーからの情報発信をWEBを通じて医師に届けるチャネルも発達していた一方で、動物医療ではWEB上の情報サービスも十分ではありませんでした。
 
藤本 「せっかく素晴らしい薬が誕生しても、その情報を全国各地の先生方に迅速かつ適切に伝わらなければ、全国のペットに良い医療を提供するのが遅れてしまいます」
その頃、日本最大手の動物用医薬品メーカーのひとつで、小動物医薬品事業の責任者をしていた野川(現CEO)もメーカーの立場で同様の課題を認識していました。

藤本はコンサルティングのプロジェクトを通じて、クライアントであった野川と知り合い、共通の課題認識を持つものとして、年の差を超えて(当時藤本は30歳、野川は60歳)酒を酌み交わす仲になります。

そして、米国調査のために一緒に訪問したアトランタのバーで、動物医療業界の課題や事業計画について語り合い、一緒に創業することを約束したのです。

その後、藤本は大塚製薬での勤務を経てキャリアを積みました。そして2013年、野川がまだ製薬企業を辞められる段階になかったことから、藤本ひとりで、Zpeer創業の具体的な準備をはじめます。

人とは違う特別な何かがあったからーー共同創業者との出会い

当時、WEBサービスの開発と運営が分かるビジネスパートナーを探していた頃、とあるビジネス交流イベントで、たまたま隣に座っていたのが栫井(現CFO兼CTO)でした。

ふたりは会ってすぐに意気投合。その2週間後には藤本から食事に誘い、共同創業の話を持ちかけました。イベントではじめて会ったときの印象を栫井はこう振り返ります。

栫井 「製薬会社の人がなぜかシステム会社としての自分のビジネスに興味津々で、ガツガツ聞いてくるので変わっている人だなぁと思い、印象的でした(笑)」
栫井は、東京大学工学部を卒業後、経済産業省に入省してマクロ経済政策や法律改正、内閣官房に出向して政府のIT・情報セキュリティ政策などを担当。そして、より現場に近い場所でビジネスを学ぶために経産省から独立し、フリーランスのプログラマーを使ったWebサービス企画・開発の受託ビジネスを立ち上げたユニークな経歴の持ち主です。

そんな栫井に藤本は「人とは違う特別な何か」を瞬時に見出し、そして出会って2回目、わずか40分で2人は共同創業を決意することになります。

解決すべき課題のために起業した藤本と、官と民の橋渡し役として、先ずは経営の仕組みから学ぼうと起業した栫井ーー。ふたりの起業に対するアプローチはまったく異なるものでしたが、藤本にとってはこれが最高の出会いになるのです。

創業後、次々と襲い掛かる試練の数々

D8f4e4093a6323e9fccb584a433071b0763a3f03
ベンチャーの創業期は、どの会社でも苦労話が絶えないものですが、Zpeerも例外ではありません。

創業メンバーのふたりに加え、まだ製薬企業で責任あるポジションにいた野川や、それぞれの領域で活躍するアドバイザー数名で毎週業務後の時間に集まり、数時間にわたる議論を重ねます。

もちろんまだ売上はなく、お金は出ていく一方。そのような中でも、獣医師の先生方やメーカーみんなが使ってくれる情報サイトを目指して開発に勤しんでいました。

しかしある日、とある大手企業の資本をバックにつけた競合他社が同様のサービスを、Zpeerよりも早いタイミングでリリースすることを知ることになります。

既にサービス開始に向けて準備は進めてはいましたが、他社より遅れるわけにはいきません。ふたりはリリース日を予定より2ヶ月早めるために、力をあわせて急ピッチで作業し、なんとかライバル会社と同日リリースにこぎ着けることに成功します。

その後も、毎月の様に襲い来る新しい課題をなんとか乗り越えながら、少しずつ成長し安定的な高い評価を得るようになっていきます。そして創業から約10ヶ月後、ついに野川もZpeerに参画します。

さまざまなバックグラウンドを持つ創業メンバーが力を合わせて課題を乗り越えてきたZpeer。

2015年現在、創業2年目にして、動物病院の40%以上、製薬や療法食の売上の大半を占めるメーカー各社が活用するサービスを確立し、獣医師による情報収集のあり方、そしてメーカーのマーケティング・プロモーションのあり方に革新をもたらし続けています。

獣医療の質向上によって多くの人を幸せに

0603c645e3ef824784e5a99b5f1407c15684ddf2
藤本 「まだまだ道半ば。『Vetpeer』のサービスは、僕らにとっては通過点です。ペットが増えること、そのペットが幸せに暮らせること、それは最終的にはその周りにいる人の幸せにつながる。獣医師の先生方をサポートさせて頂くことで、その先にいるペットや飼い主のみなさんの幸せに貢献したいんです」
着々と事業を推進していながらも、Zpeerの創業メンバーたちはさらなる未来を見据えています。

藤本の事業推進力を支えているのは、獣医師の方々からの喜びの声と、故・岩本太郎氏(大塚製薬 前代表取締役社長)の教え。大塚製薬時代、岩本氏の側で働いていた藤本は、岩本氏の強烈なリーダーシップにそれまでの経営者像を覆されたのです。

藤本 「それまでは会社の経営はキレイなビジネスモデルがあって、それを回す仕組みがあれば、会社は回ると思っていました。でも岩本社長と出会って、経営者の”熱意”と”リーダーシップ”こそが、会社の成長を推進していることを思い知ったんです」
そして栫井もまた、獣医療を国の政策とつなげて、より良い社会を生み出していくことに人並みならぬ熱意を持っています。

ペット市場は国として取り組みが曖昧な分野です。農水省は牛肉や豚肉などの食べ物を安全に管理するのがミッションなので獣医師資格を管理し、また環境省では動物愛護法を持って取り組んでいますが、残念ながら政府として1兆円を超えるペット産業を振興する部署はありません。

栫井 「今後はペットを家族としてとらえつつ、ペットをとりまく産業をどう振興していくかが課題です。Zpeerが全国の獣医師の方々の声をキャッチし、国の政策企画の場に現場のニーズを的確に伝え、また国からの情報をどこよりも早く発信することで、ペットをとりまく社会を良くしていきたいと強く思っています」
業界のニーズに着目して創業したZpeerは、獣医師や動物医療メーカーに対してこれからも付加価値の高いサービスを開発・提供していきます。

その視点の先では、ペットの幸せ、そしてその周りにいる全ての人の幸せを見ています。

関連ストーリー

注目ストーリー